みなが心酔「B・スプリングスティーン」の影響力 ウドー音楽事務所の伝説のツアマネが回顧

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――ショービジネスの世界で生きていくことの難しさを感じます。

やはりデビューして、スタート地点に立てる人は多いと思うんですが、どこまで長くやっていけるかだと思います。メジャーデビューは終わりではなく、スタート。それは大学や会社なんかもそうじゃないですか。いい大学、いい会社に入ったことが終わりなのではなく、そこから何をするかということですからね。

――いかにして長く続けるかということですね。

ミュージシャンでも、長く続かなかった人たちにはやはりそれなりの理由があるわけです。その人の人間性もあるだろうし、仲間との問題、お金の問題などもあるだろうと思います。でも彼らのようなミュージシャンがなぜ長く活動できるのかといえば、それはやはり信頼関係ですよね。ブルースにしても、30年、40年と顔なじみのスタッフがまわりを固めている。そういう信頼関係があるんですよ。

高橋辰雄/たかはし・たつお ウドー音楽事務所取締役副会長。1974年にアルバイトとして業界入り。1975年から正社員となり、40年以上、ツアーマネジャーを務めた。多くの海外アーティストらに愛称「TACK」で親しまれ、ブルース・スプリングスティーンをはじめ、エリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ボブ・ディラン、ミック・ジャガーら数多くのスーパースターを招聘し、担当してきた。1985年のスプリングスティーン初来日から担当し、ボスを知り尽くす伝説のツアーマネジャー (筆者撮影)

――それは日本でのプロモートを担当されている高橋さんとの信頼関係もあるということですね。

自負するわけじゃないですが、多少はあるでしょうね。「日本に行ったらウドー音楽事務所がいるから」という信頼関係が。

やはり彼らにしたら、違う国に行くと不安なわけですよ。文化も違う、衣食住も違うと。そういう中で、知っている人たちがいる。何かのときには、助けてくれるといった安心感がある。そういう意味では、お金だけではない関係性があります。ブルースとはマネジメントをはじめとした、そういう信頼関係が出来上がっているんです。

来日前から帰るまでがマネジメント

――来日したときには、日本に来たらここに行くといいよみたいなことを記した、遠足のしおりのようなものを渡したと聞きましたが。

作りましたね。なぜそれを作ったのかといえば、来日したアーティストを困らないようにしたいということです。日本で大変なことにならないようにと。そうした積み重ねが多分あると思います。「われわれはあなたの味方ですよ、だからあなたが困ったことにならないようにします」ということにつきると思います。

そこがわれわれのビジネスにもつながっている。うちの会社には制作部門、ツアーマネジメント部門、プロジェクション・マネジメント部門というのがある。アーティストが実際に日本に来る前から、帰るまでの間のマネジメントを一時的ではありますが全部引き受けるわけです。それから、うちの場合は担当者がすべてフェース・トゥ・フェースでやりとりができるというのが会社の強みだと言えます。

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