――主人公が影響を受けるのが、ブルース・スプリングスティーンであるというところがこの映画の面白さだと思うのですが。
もちろんいろんなミュージシャンに影響を受けている人は大勢いると思いますが、その中でもブルース・スプリングスティーンというのは特別な存在だなという気がします。それは彼が等身大で生きているから。
上からじゃなくて、近くにいて教えてくれるというのかな。それは今の時代にも合っていると思うんです。今は上から来ると、違う次元で聞いてしまうけど、身近な存在から言われると感情移入できる。今の時代は、ビジネスも含めて全部そうなっているかもしれません。
――確かに。今どきは身近な存在のほうが親しまれやすいということはあると思います。
言葉に語弊があるかもしれませんが、お笑いにしても、映画にしても、今はお茶の間感覚というか、等身大というのがビジネスの重要なポイントになっています。
ブルースにはセレブ感がなくて大衆的なんですよ。彼の場合は音楽だけじゃなくて、生き方にも共鳴できる。ブルース自身がいい人だしね。この映画の主人公は、ひとりのミュージシャンの楽曲に影響されて人生が変わっていく。そういう意味でピュアですね。ブルースの楽曲もピュアだし、聴いているほうもピュアだったから、こういう作り方はよかったのかもしれないです。
ブルースは大衆的で生き方に共鳴できる
――ブルース・スプリングスティーンの楽曲はストレートに響きますからね。
そうですね。やっぱり一番は勇気をくれたと思うんですよ。「頑張れ」と音楽が背中を押してくれる。自分が持っている劣等感を音楽が励ましてくれた。そういうことが生きるうえでの強みになってきたのかなと思います。
――最近でも、黒人差別抗議運動の契機となったジョージ・フロイドさんの暴行死事件についてのメッセージや、トランプ政権に対する批判もしっかりと発信していて。ブルース・スプリングスティーンの生き方の軸はぶれていないなと感じます。
彼は、いい、悪いをちゃんと言える人なんでしょう。そういう意味では、好き嫌いやいいか悪いかの基準がぶれていない。彼は相手を見て基準を変えないというか、利害とかそういうことで判断しないところがあると思いますね。そのハートの部分が伝わってくるんだと思うんです。
――しかも今でもずっと第一線で活動しているということがすごいことだと思うのですが。
そういう人が本物なんでしょうね。やっぱり30年、40年、第一線でやっている人というのはなかなかいないわけですから。ボブ・ディランにしても79歳。エリック・クラプトンだって75歳。そういう人たちがまだ現役でやっているわけだから。
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