アメリカ人落胆「都市封鎖は無意味だったのか」 中途半端な経済再開で感染者増止まらず
アメリカが新型コロナウイルスとの闘いに突入して4カ月以上、多くの国民はそれまでの生活を中断し、失業、廃業、行動変容という形で多大な犠牲を払ってきた。しかし、それでも感染の拡大を食い止めることができずにいる。世界各地で猛威を振るうコロナはどこまでしぶといのか、その実態すらまだ解明の途上にある。
6月下旬、アメリカの新規感染者数は危険なまでに跳ね上がった。中でも急いで経済活動を再開した州では、これまでに目にしたこともない感染拡大が起こっている。かくして、国民の多くは悟った。国民が通常の生活に戻りたいとどれだけ熱望しようとも、自分たちの指導者はパンデミックの制御に失敗したのだ、と。これから先がどうなるかも、まるで見通せない。
「明確で一貫したメッセージを繰り返し発しなければならないときに、そのようなメッセージがまるで出てこない」と、テネシー州ナッシュビルにあるバンダービルト大学の感染症専門家、ウィリアム・シャフナー教授は指摘する。「現実は逆(に混乱したメッセージばかり)で、それを正すのも難しくなっている」。
傲慢な専門家、非現実的な期待
保健衛生当局には当初「相当なおごり」があったとシャフナー氏は言う。当局はロックダウン(都市封鎖)を行えば、アメリカも中国のようにウイルスを封じ込められると考えていたというのである。こうした妙な自信が、人々の間に非現実的な期待を生んだ。ロックダウンは、それがたとえ苛烈なものであったとしても長くは続かないだろうし、解除されれば生活は元どおりになる、という期待だ。
こうした期待を一段と強めたのがトランプ大統領だった。同氏は危機の深刻さを小さく見せかけ、マスクの着用を拒み、感染拡大が続いている段階で各州に経済活動の再開を呼びかけた。各州の取り組みが混乱したのは、連邦政府が指導力を発揮しなかったからでもある。
連邦政府から明確な方針が示されないため、各州はそれぞれが勝手に動いた。国民は外出制限でウイルスの拡散を遅らせ、貴重な時間を稼いだ。が、多くの州はロックダウン期間を利用して、経済再開を着実に推し進めるための態勢を十分に整えようとはしなかった。
一方、専門家は検査や監視、接触者の追跡など、新規感染を抑え込む仕組みを大急ぎで立ち上げる必要があると各州に勧告していた。そうしなければ、パンデミックは再び猛威を振るい始めることになるからだ。