コロナ後に「活躍できる人」「できない人」の差 必要なのは「未来を語る人」ではない

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つまり、組織のなかにいてもいなくても、普段の生活範囲だけではなく、より広い視点から自分ができることを整理できるようになると、かえって自分の役割に集中しやすくなると思います。

フューチャリストよりも「ナウイスト」

自分なりの貢献を、自分なりの規模でしていくにはどうすればいいでしょうか。そのいいお手本になるのが、Yahoo!アカデミア学長の伊藤羊一さんです。

伊藤さんは、コロナ感染防止のための学校閉鎖を受けて、立教大学の中原淳教授らとともにたった5日間で人を集め「ニッポンのオンライン授業カンファレンス2020」と題し、オンライン教育や授業のノウハウを、全国の学校や企業の教育関係者へ無料で開放しています。

彼のように、社会の需要に対して瞬時にイノベーションを起こせる人を「ナウイスト」と言います。これはMITメディアラボの元所長である伊藤穣一さんが、TEDで「これからイノベーションを起こすのなら、未来をあれこれ思い描くフューチャリストではなく、“今ここ”で創造するナウイストになろう」と話したのを機に広まった言葉です。

僕は伊藤羊一さんのように、学校が閉鎖して教育が止まってしまう“今ここ”の瞬間に、いち早く教育現場の人たちにオンラインカンファレンスを開いた行動こそ、ナウイストらしい行動だと考えています。

伊藤羊一さんのもとに瞬時に人が集まるのは、ご自身が「これで偉くなろう」とか「尊敬されよう」などとは1ミリも思っていないからだと思います。彼は平時から、教育や学習についてつねに考え続けている人です。さらに、教育分野に対し深い愛情を持っていることを、誰もが知っているから、いざというときに人を集め、物事を動かしていくことができるのです。つまり、動機の中心に「自分がやりたいこと・役立てることの軸」と、「他者への愛や貢献の気持ち」が明確にあるから、波紋が広がり、彼に共鳴する人が集まってくるのでしょう。

もちろん、規模の大小は問題ではありません。「軸」と「愛」が中心にあれば、自分が住んでいる地域、オンラインサロンやSNSのつながりなど、自分にできる範囲のなかで行動できればいいと思います。

これからは課題やルールを新しく定義したり、新しい課題解決の仕方を定義したりする人が生き残りやすい時代になるといえます。伊藤穰一さんは著書『9プリンシプルズ』や自身のインタビューで、たびたび、変化の時代で向かうべき9つの原則を紹介しています(ここでは2012年のインタビューで語られていた原則に基づいて解説しています)。

1. 強さではなくしなやかさを持つこと。つまり、失敗に抵抗しようとするのではなく、失敗を認め、受け入れたうえで、そこから跳ね上がっていくこと。
2. 「押す」のではなく「引く」こと。資源を中央に集めてコントロールするのではなく、必要に応じてネットワークから引き出すこと。
3. 安全に焦点を当てるのではなく、リスクをとること。
4. モノではなく、システムに焦点を合わせること。
5. 地図ではなく、よいコンパスを持つこと。
6. 理論ではなく、実践に基づくこと。なぜそれが機能するのかわからないときもあるが、大事なのは、理論を知っていることではなく、それが機能するということだ。
7. 服従ではなく、反抗すること。人に言われたことをしても、ノーベル賞は取れない。多くの学校は服従について教えるが、われわれは反抗を賞賛するべきだ。
8. 専門家ではなく、クラウド(人々)に向かうこと。
9. 教育ではなく、学習に焦点を当てること。
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