疑惑の「事業協力者住戸」千代田区が残した教訓 デベロッパーと行政との適切な関係とは

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自身が規制緩和を行ったマンションを購入することの是非が問われている(記者撮影)

李下に冠を正さず。

「疑わしいと指摘されている点はまったくない」。6月16日、東京・千代田区の石川雅己区長が記者団に配布した資料には、身の潔白を訴える主張が並んでいた。直前に千代田区議会では、地方自治法第100条によって強い調査権を与えられる「百条委員会」が開かれ、区議会議員による厳しい追及が行われていた。

「事業協力者住戸」と知っていたか

区長が規制緩和を行ったマンションを、区長自ら購入することは白か黒か――。問題となっているのは、石川区長夫妻と次男が共同で購入した千代田区内のマンションだ。

2018年に三井不動産レジデンシャル(三井不レジ)が分譲したこのマンションは、「総合設計制度」によって本来の高さ制限である50メートルより10メートル高く建設されている。公開空地の整備など地域の環境改善に貢献する代わりに、建築基準法の規制を緩める制度だ。この規制緩和を区長が主導し、その対価として三井不レジが区長に対して優先的に住戸を販売したのではないか、という疑惑が持ち上がっている。

2015年11月時点の価格表(上)にはなかった「事業協力者住戸」の表記が、2016年2月時点の価格表(下)に出現した(記者撮影)

次男らが初めてマンションのモデルルームを訪れたのは2015年11月7日。当時マンションは正式販売前で、担当者から手渡された予定価格表にも特段の記載はなかった。

ところが、当日の来場者アンケートにて「◯階の×タイプに興味がある」と次男が記入すると、翌2016年2月6日に再度モデルルームを訪れた際には、渦中の住戸には白抜きで「事業協力者住戸」と記載され一般客が購入できない扱いになっていた。

事業協力者住戸とは何か。三井不レジが千代田区議会に対して回答したところによれば、もともとマンション用地を所有していた地権者向けに提供する、所有していた土地と同じ価値の住戸を指す。このほか、得意客に対して優先的に住戸を販売するため、事業協力者住戸扱いにして抽選販売を避けることもある。

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