疑惑の「事業協力者住戸」千代田区が残した教訓 デベロッパーと行政との適切な関係とは
いずれも真相は闇の中だが、今回は石川区長、三井不レジ双方の対応がずさんだったことは間違いない。
区長が購入予定の住戸を「事業協力者住戸」として扱った理由について、三井不レジは「お客様個人との取引経緯に関するもので、プライバシーや守秘義務との関係上、弊社からは回答しかねる。弊社としては、ご指摘のお取引を含め、取引慣行に従った適切な販売を行っている」としている。とはいえ、許認可権者を安易に得意客として扱うことがどのような臆測を招くかは予測できたはずだ。
広報担当者がいさめる場面も
一方の石川区長側は、危機管理体制に課題を残した。区長は「そもそも裁量の余地はない」と主張するが、自らが開発の許可を下したマンションを購入することには慎重さに欠ける。3月9日の区議会で本件について追及された際、区の行政管理担当部長は「実務を担当した一般職員が後に当該マンションの協力者住戸を優先的に購入した場合があれば、倫理規定に抵触することもある」と答弁している。
百条委員会終了後の囲み取材では、記者団に対して色をなす石川区長に、区の広報担当者が「誤解を招いたことについては謝罪してはどうか」といさめる場面もあった。区長は一度謝罪したものの、すぐさま「プライバシーに関わる事柄について百条委員会を設置すること自体が問題」「このマンションは販売に非常に苦戦していたようで、価格も下がっている」などと一転して持論を展開し、同席する弁護士や区職員は困惑していた。
さらに6月25日の区議会閉会後のぶら下がり取材にて、石川区長は「早く申し込めば優先的に購入できる」と三井不レジの担当者が次男に対して持ちかけたことを明らかにした。百条委員会では明らかにされなかった新たな事実だが、「広報を通した発言ではない」(広報担当者)。広報による交通整理なくして場当たり的に飛び出す放言は、自身の立場を危うくしていく。
建て替えや再開発においては、建物の高さや容積率といった収益性に寄与する規制緩和を行政が与える対価として、デベロッパーは開発を通じて地域の防災性や生活利便性を高める。その意味で行政とデベロッパーは持ちつ持たれつの関係にある。不即不離をどう維持していくか、千代田区の騒動は古くて新しい問題を浮き彫りにした。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら