ソニーもその点に目をつけ、2019年5月には「エッジAI」戦略を発表。クラウドではなく、情報機器のすぐ近くでAI処理をすることで、機密保護や遅延削減が可能だとし、車載や産業機器向けの市場を主なターゲットにしている。今後の自動運転技術の進展に伴い画像センサーの役割が車載市場で高まっていくほか、産業機器では検査工程での画像センサー利用の引き合いが強まっている。
「画像撮影だけでなく、その情報をAIで処理するような『マシンビジョン』の分野まで含めると、その市場成長率は年率17%になる」。そう話すのはソニーの半導体子会社、ソニーセミコンダクタソリューションズの執行役員である染宮秀樹システムソリューション事業部長だ。同事業部は、これまでハードウェアの各事業部でばらばらに行われていたソリューション関連の事業をまとめる形で2019年6月に発足した。
新製品のIMX500はシステムソリューション事業部ができる前から開発してきたものだが、「これでどんなソリューションを展開していくか、どんなビジネス展開をしていくかを、事業部内で再定義した」(染宮氏)という。IMX500はスマートカメラの仕様を決めている段階で、マイクロソフトのクラウドサービスも活用して、ソリューションも提供していく。
優位性を一段と高められるか
ソニーはこうした製品を用いて、モノ売りにとどまらず画像処理のソフトウェアやサービスによる継続的な売り上げが見込める「リカーリング収益モデル」の確立を目指す。その売り上げ比率は2019年度にはわずか4%だが、2025年度に30%に伸ばすのが目標だ。
現在の売り上げ規模から計算するリカーリング収益は3000億円近くになる。それが実現できれば、スマホなど一時的な端末の需要に業績が左右されにくい、安定的な収益源になりうる。
これは「モノ売り」の依存から「コト売り」の強化といえるが、新たなビジネス展開を本格的に検討し始めたのは2018年から。「ある種、(ソニーの半導体は)ハードウェアが非常に強いという自負があった。本来もっと前から取り組まなくてはいけなかった」(染宮氏)。
イメージセンサーのハード分野で高いシェアを握っており、それを生かしたサービス分野でも目立ったライバルがいないのも事実だ。先行者としての地位を固め、さらに優位性を高めることができるか。ソニーの半導体事業は転換点に立っている。
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