森永卓郎「東京を捨て田舎暮らしを選んだ理由」 人生観に応じて住みたいところに住めばいい

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私が住む所沢市は人口約34万人、と決して小さな市ではありません。人口の規模では高槻市(大阪府)、大津市(滋賀県)、旭川市(北海道)、高知市(高知県)などと同程度。

森永氏が暮らす「所沢」の風景(写真:hiroshi/PIXTA)

そのため、所沢駅周辺は都内と遜色のないにぎやかさですが、駅から20分程度の距離になると風景は一変し、田園風景が広がります。私の場合、駅に出るときは家内に自動車で送ってもらいますが、信号の引っかかり方次第ですが5、6分で到着します。

その程度の距離で、それほど田舎になるのかと驚かれる方もいることでしょう。しかし、現在の住宅市場では当たり前のことです。需要があるのは、駅から徒歩10分以内の物件。わが家は歩けば、おそらく17~18分だと思います。わが家よりもさらに離れると、劇的に安くなります。一戸建てがキャッシュで買えます。

都心の生活に慣れてしまうと、駅やスーパーが近くないと不便に感じてしまうかもしれませんが、マイカーを利用すれば駅の近くに住む必要はありません。

また、都会を離れるほど、ガソリンが安くなります。私の事務所がある都内のガソリンスタンドは、リッター150円台の看板が出ていますが、埼玉では1リッター当たり20円以上安いです。埼玉は東京に比べて地価が安く、また、幹線道路も多くあるためにガソリンスタンドの激戦区で、値下げ競争になりがちという事情もあるのでしょう。

都会での生活では、駐車場コストが問題になります。私が住む場所では、借りれば月に6000円から7000円です。都心の仕事場にしているマンションの駐車場は4万3000円ですが、所沢ならアパートが借りられる金額です。この点だけをとっても、都心は住むのに適した場所ではないと感じます。

家と山が800万円で手に入る

さらに都心から離れたイナカに行けば、地価は0円に近くなると言っても過言ではありません。例えば地方の中山間地域に行くと、畑が1ヘクタールぐらい、家があって、山がついて800万円程度です。1000万円台はほとんどないと思います。少し頑張ってお金を貯めていれば、キャッシュで買える価格です。

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もちろん、田舎はユートピアではありません。近隣にコンビニやカラオケがなく、夜になると真っ暗になる。現金収入を得るための生業のほかに、祭祀事や町内会の集まり、清掃活動など共同体を支えるための仕事を分担するなど、それなりの苦労があります。時として近所の人が生活エリアに入ってくることもあります。東京の生活に慣れた人には人間関係が濃厚すぎると感じるでしょう。

その人の人生観に応じ、東京や大阪から適切な距離をとるのがいちばんよいと思います。私の場合、その距離が所沢というトカイナカだったわけです。

若い人であれば、トカイナカではなく、完全な田舎にチャレンジしてもよいと思います。自治体が移住のための助成金を支給するところがありますし、一定期間住む条件で家を提供してくれるところもあります。

実際に移住したビジネスパーソンも少なくありません。「自給自足」を実践するとともに、スタートアップ(起業)や、近隣の企業で働くなどして生活資金を稼いでいます。思い切って新天地に飛び込むのも1つの選択肢ではないでしょうか。

森永 卓郎 経済アナリスト、獨協大学経済学部教授

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もりなが たくろう / Takuro Morinaga

1957年東京都生まれ。東京大学経済学部卒。日本専売公社、経済企画庁、UFJ総合研究所などを経て現職。テレビ、ラジオ、雑誌、講演、著作などで活躍中。読売テレビ「情報ライブ ミヤネ屋」、TBSテレビ「がっちりマンデー‼」、毎日放送「サタデープラス」、名古屋テレビ「ドデスカ! 」、朝日放送「キャスト」、文化放送「大竹まことゴールデンラジオ!」、ニッポン放送「垣花正 あなたとハッピー! 」、TBSラジオ「生島ヒロシのおはよう一直線」など出演多数。

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