森永卓郎「東京を捨て田舎暮らしを選んだ理由」 人生観に応じて住みたいところに住めばいい
さらに、利益の最大化を目的とした大規模農業では、食の安全を守れる保証がありません。現にアメリカでは植物を軒並み枯れさせてしまう非選択性の除草剤を散布し、その除草剤に耐性のある遺伝子組み換え作物を育てています。多くの国民が知らず知らずのうちに口にしている可能性があるのです。日本の大規模農家も、効率最優先の農業をいっそう推進すれば、そうならないという保証はありません。
消費者も考え方を改める必要があります。インド建国の父、マハトマ・ガンディーが唱えた「近隣の原理」です。近くの人が作った食べ物を食べ、近くの人が作った服を着て、近くの大工さんが作った家に住む――そうした小さな経済の輪が、グローバル資本主義からの防御壁となります。いわば「地産地消」の考え方です。
ただ、グローバル資本主義を完全に否定することは、現実問題として無理でしょう。明日から全国民が地方に移り住み、農業に従事できるとは思えません。一時的にすべての経済活動がストップしてしまいます。
現実的な解決策は、従来の日本の兼業農家を守るとともに、多くの国民が「自分の食べ物は自分で作る」というマイクロ農業を普及させることなのです。
「都心は人の住むところではない」
トカイナカにいても、これまでどおりの仕事はできます。パソコンがあれば、オンラインで会議や打ち合わせは可能です。
私の場合、テレビの収録などは早朝や深夜に及ぶことが多いため、どうしても東京に宿泊施設が必要です。そこで2007年から都心の小さなマンションを借り事務所にして、家に戻れないときは、事務所のソファで寝泊まりをしています。もちろん、電車があるときは、家に戻ります。
13年にわたる都心とトカイナカのパラレル生活を経験した結果、「都心は人の住むところではない」という考えに至りました。
例えば朝、所沢では鳥のさえずりで目が覚めますが、都心ではパトカーのサイレンとか、バイクの爆音で起きます。それが1日ぐらいであれば「仕方ないかな」と思うのですが、年がら年中となるとまったく話が変わってきます。
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