日本がアメリカ・中国との間で求められる姿勢 グローバリゼーションに目を背けてはならない

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トランプ大統領の自国第一主義やイギリスのブレグジット(EU離脱)宣言などの影響もあり、グローバリゼーションは後退を余儀なくされている状況である。ブレグジットは決定したものの、まだ始まりの始まり。はたしてどのような形で収まるのか、不安は尽きない。

それどころか、大統領選が今年11月に迫るなかでもトランプ大統領の保守主義政策が収まる気配はない。

中国とアメリカは、日本にとっては貿易相手国の第1位と第2位だが、2019年にIMF(国際通貨基金)は、このままアメリカと中国の貿易戦争が深刻化すれば、2020年の世界のGDPは0.5%、金額にして4550億ドル落ち込むという試算を出した。
世界経済にとって超大国の対立は危険極まりない。コロナ問題が落ち着いても、この水準を上回るには少し時間がかかるだろう。ゆえに貿易に楽観は禁物だ。
(218ページより)

だが考えてみれば、世界のリーダー・覇権国のリーダーとしての地位を放棄したアメリカの大統領が「アメリカ・ファースト」であるのは当たり前の話。なぜなら、それぞれ自国が第一なのだから。

もちろんアメリカ・ファーストはトランプ大統領の保護主義的側面の表れではあるだろうが、どの国も自分の国益が第一であることは疑いがない。そのことを意識にとどめておくことは、なるほど非常に重要なことなのではないか。

氷上のシルクロードの地政学

しかしトランプ大統領やイギリスのEU離脱にかかわらず、世界はグローバリゼーションに向かっている。そうした事実を鑑みると、アメリカ・ファーストやブレグジットをもって「反グローバリゼーション」と片付けるのは過剰反応ではないかと丹羽氏は考える。

今後の30年を考えれば、グローバリゼーションは世界の理性、各国の国是というべきものだ。とりわけ技術革新や地球環境を考えれば避けられない世界の動きである。
グローバリゼーションに抗い、けんかをやってよいことなどどこの国にもない。
(219ページより)

そう考えるからこそ、こうも断言しているのだ。「これからの30年、日本は世界の国々と戦いを交えず、平和と自由(貿易)を国是とするべきだ」と。

全世界的にさまざまなバランスが崩れつつあるように思えるだけに、この考え方には強く共感する。

印南 敦史 作家、書評家

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いんなみ あつし / Atsushi Innami

1962年生まれ。東京都出身。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。「ライフハッカー・ジャパン」「ニューズウィーク日本版」「サライ.jp」「文春オンライン」などで連載を持つほか、「Pen」など紙媒体にも寄稿。『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(PHP文庫)、『いま自分に必要なビジネススキルが1テーマ3冊で身につく本』(日本実業出版社)『「書くのが苦手」な人のための文章術』(PHP研究所)、『先延ばしをなくす朝の習慣』(秀和システム)など著作多数。最新刊は『抗う練習』(フォレスト出版)。

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