日本がアメリカ・中国との間で求められる姿勢 グローバリゼーションに目を背けてはならない

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中国にとって、最大の輸出先は以前からずっとアメリカだ。トランプ大統領が、不公平な取引だとして中国からの輸入品に高関税をかけたのも、そのような関係性があるからだ。

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そしてもう1つ、無視できないポイントがある。貿易赤字のツケを輸入国に回そうとするのは、「アメリカの伝統的な態度」だということ。確かに、過去には日本も何度となく味わったことである。

それだけではない。中国が輸出で得たドルをアメリカ国債に換え、アメリカ政府の財政を支援する形になっていることも、かつての日本と同じだ。そう考えてみると、米中関係をステレオタイプな視点で捉えてもあまり意味がないということがわかる。

さらに注目すべきは、丹羽氏のグローバリゼーションに対する考え方だ。

グローバリゼーションとは、どちらかの国がどちらかの国を叩いて優位に立つという類いのものではない。双方が利益を得る売り買いよしの関係、日本古来の思想でいえば近江商人の「三方よし」もグローバリゼーションである。
(206〜207ページより)

そして、経済面では紆余曲折あれど、アメリカも中国も今後30年の間にはグローバリゼーションの基本原則に戻り、双方の経済発展を優先することになるだろうと丹羽氏は考えている。なぜならそれがビジネスであり、そうでなければビジネスは成り立たないからだ。

冷静な目で世界を見るとき

もちろんアメリカは、日本にとっての重要なパートナーでもある。アメリカでの長いビジネス経験を持つ丹羽氏も、「日本の戦後史のなかで、アメリカの果たした役割が大きいことは議論の余地がないことだ」と認めている。

とはいえ、世界の地図が変わってきていることも事実。誰の目にも明らかなとおり、いまや「なにからなにまでアメリカ一辺倒」という世界情勢ではないわけである。

戦後史を振り返ってみても、昭和という時代がアメリカの影響下にあったという事実は、「敗戦」という結果からやむをえないことだ。平成が昭和の延長策を選択し、「アメリカ優先」を継承したのも当然のことと解釈できる。

だが人間に例えれば、当時1歳だった日本もいまや70歳以上。しかも、いまや新しい時代が訪れている。そんななかで日米中は国内外において、これまでの延長戦では解決できない課題を山ほど抱えている。

そこで重要な意味を持つのが、「日中はお互いに引っ越しできない関係」であるという考え方だ。

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