日本がアメリカ・中国との間で求められる姿勢 グローバリゼーションに目を背けてはならない

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私は習近平と十数回ほど会っているが、彼がつねに言っていたのが「日中はお互いが引っ越しはできない」である。
日本には、アメリカとさえうまくやっていればそれでいい、中国は嫌いだ、中国なしでもやっていけると主張する人たちがいる。だが、それでも日本は、アジアの端からフロリダ沖に引っ越すことはできないのだ。
(207ページより)

客観的に考えてみても、世界の成長エンジンとして世界経済を牽引する国の近くに日本がいることは事実だ。なのに、なぜそこから離れ、わざわざ距離を置く必要があるのか。

経済を見れば、世界一の大市場のお客が目の前にいるわけである。なのに、なにも売らないのだとすれば、商人としては失格だということだ。

丹羽氏が指摘するまでもなく、これからの30年は日本社会にとって問題だらけだ。好材料はほぼないといっていい。では、どうするべきか? 日本にとって経済的にわずかなチャンスがあるとすれば、それは中国とASEANの巨大な市場であるということになる。

なのに、せっかくのチャンスを狭量で偏った価値観のために無駄にすることはない。したがって、中国が嫌いな人でも、中国は「有望な得意先」であると、せめてアメリカの半分でも歩み寄ったほうがいいということだ。

グローバリゼーションあってこそ

グローバリゼーションなき日本とは、鎖国(1639~1854年)していた江戸時代と同じ。ましてや現代は、経済も文化も、あらゆるものが世界のどこかの国とつながっているのだから、グローバリゼーションなくして日本人は生きていけないと丹羽氏は言う。

ましてや過去を振り返れば、今回の新型コロナウイルスの世界的な感染拡大のようなパンデミックが、今後も起きるであろうことは間違いないだろう。

またサプライチェーンをさかのぼっていけば、ほとんどの人が知らない国の生産物が、多くの商品の原材料になっていることも珍しくはない。

そんなところに目を向けてみても、世界がつながっていることは明らか。温暖化問題を引き合いに出すまでもなく、世界は1国の都合だけで考えられる時代ではない。そのため、四方を海に囲まれた日本として、世界のどの国とも仲よくするのが望ましい。

どの国とも、自由に技術提携と商品の貿易ができるような体制を保つことが必要である以上、どの国とも、平和に付き合っていかなければならない。アメリカ一国だけに頼り過ぎるリスクを心すべきだ。これが根本である。
(217ページより)

これからの30年も、平和と貿易なくして日本の維持・発展は考えられない。そのため、相手がたとえ北朝鮮だったとしても、いずれは仲よくやっていく必要がある。日本の地政学的にも、それは極めて重要だという。

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