太平洋戦争「開戦の日」に考えてほしいこと 現代史は日本人が学ぶべき最重要科目である
終わりだけを知って始まりを知らない日本人
今日12月8日は、1941年(昭和16年)に日本がアメリカとイギリスに宣戦を布告した「開戦の日」、いわゆる太平洋戦争の開戦日である。当時、2歳だった私にはこの日の記憶はない。
同日、発表された開戦の詔書では、宣戦布告の相手はアメリカ、イギリスの2カ国であった。一方、終戦の8月15日に玉音放送で流れた終戦の詔書ではアメリカ、イギリス、中華民国、ソ連の4カ国が当事国である。中国とは1937年(昭和12年)の支那事変からすでに戦争状態にあり、ソ連は1945年(昭和20年)8月8日に日本に宣戦布告しているので、開戦の詔書と終戦の詔書では当事国の数が異なるのだ。
終戦記念日である8月15日は、毎年、日本中でさまざまな式典があるため、ほとんどの日本人が知っている。それに対して、開戦の日である12月8日は、アメリカでは12月7日「Remember Pearl Harbor」で、私がアメリカ駐在のころ、日本人はおとなしく早帰りしていたが、日本では特に大きなイベントもなく、メディアもあまり取り上げることがないので、単なる師走の1日にすぎない扱われ方となっている。しかし、物事には始めがあって終わりがある。日本人にとって12月8日は8月15日と並ぶ大事な日であるはずだ。
私が今年の8月に出した『戦争の大問題』の中でも紹介しているが、開戦時の日本の指導者たちは、勝ち目のないことを承知で出口なき戦いへ突入していった。『昭和16年夏の敗戦』(猪瀬直樹著、中公文庫)という本がある。昭和16年の8月、陸海軍および各省、それに民間から選ばれた30代の若手エリートたちが日本の兵力、経済力、国際関係など、あらゆる観点から日米戦を分析した。
研究会の報告は、「開戦初期には勝利が見込めるものの、長期戦になることは必至であり、日本の国力では、資源不足と生産力不足によって戦力の低下は避けられない。戦局が決定的に悪化すれば、最終局面で必ずソ連は参戦し日本は敗れる」という、ほぼ実際の日米戦をトレースする精度の高いものだった。日本必敗である。
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