マツダ、27分の超短時間総会でも山積する課題 株主の質問は3つ、開催時間は史上2番目の短さ

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また、マツダが2021年からアメリカで稼働させる新工場(アラバマ州)に対して、取引先からは不安視する声も聞かれる。

トヨタとマツダは約16億ドルを折半出資して新工場を建設。それぞれの年間生産能力は15万台で、マツダは北米向けに新型SUVを生産し、伸びしろが大きいSUV市場の成長を取り込む考えだ。

2020年5月のアメリカの新車販売は新型「CX-30」効果で前年同月比1%減にとどまった。ただ、コロナ前の2019年の販売台数は前年比7%減と低迷しており、メキシコ工場の稼働率も落ち込んでいた。足元の販売の水準は本格回復とは言いがたい。

「メキシコの投資回収もまだ終わっていない。マツダの台数成長を見込み、日本の工場の設備も増強したばかり。足元の生産調整(減産)で十分に稼働できていない」。マツダ系の1次部品メーカーの幹部はこう話し、投資回収に遅れが出ることを懸念する。この会社はマツダ向けの売上高が会社全体の9割を占める。マツダに帯同して海外拠点を積極的に増やしてきた。

新工場の生産能力を使い切れるのか

マツダは生産委託分を含めると、現在世界で186万台の生産能力を有しており、2021年にアラバマの新工場ができれば生産能力は200万台を超える。「アメリカの新工場で加わる(生産能力)15万台を本当に使い切れるのか。台数が出ないとわれわれの業績にも(マイナス影響として)跳ね返ってくる」(前出の部品メーカー幹部)。

自動車メーカーの工場は一般的に稼働率8割が採算ラインの目安とされ、部品メーカーも同様だ。先述したマツダの2次下請けの社長も「2019年度は何度も生産台数が下方修正され、右往左往した。マツダは台当たりの収益性が向上したというが、下請けの我々が利益を出すためにはやはり数が必要だ。独りよがりにならないで欲しい」と恨み節を口にする。

マツダはコロナ前から販売改革を進めており、商品価値を訴求することで極力値引きを抑える「正価販売」を主力市場のアメリカでも根付かせようとしている。だが、2019年度の販売実績が9%減となったことからも、その難しさがわかる。

それでも、世界シェア2%のスモールプレーヤーとして生き残るために、ブランド価値を引き上げ、販売の質と台数の両方で成長を実現する。追求する方向性は真っ当だが、コロナ影響が長引いて台数が伴わなければ覚悟を決めて能力を増強した部品メーカーらが苦境に追い込まれる。そうした場合、資金繰りなどマツダが一定の支援をすることも必要だろう。

コロナ禍で販売改革を遂行できるのか。2020年1月に創業100周年を迎えた老舗企業の胆力が試されている。

木皮 透庸 東洋経済 記者

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きがわ ゆきのぶ / Yukinobu Kigawa

1980年茨城県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。NHKなどを経て、2014年東洋経済新報社に入社。自動車業界や物流業界の担当を経て、2022年から東洋経済編集部でニュースの取材や特集の編集を担当。2024年7月から週刊東洋経済副編集長。

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