コロナ禍のロシア、7月1日正念場のプーチン モスクワはピークアウトも地方に感染広がる

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3月24日の新型コロナ対策会議。話しているのはモスクワのソビャーニン市長(写真:ロシア大統領府)

新型コロナの拡大に危機感を深めていたのはモスクワ市だ。公式の発表では憲法改正案が議会で承認された3月10日時点でのモスクワの感染者は累計でわずか9人、すべてがイタリアなどヨーロッパからの帰国者だった。モスクワ市が危機感を募らせたのは、濃厚接触者の数が1000人を超えていたからだ。感染者は40代までの若い世代が多かった。ビジネスでも娯楽でも社会的に活発な彼らの接触者は予想よりもはるかに多かった。

「2月26日ミラノ・モスクワ便、3月1日のベルガモ・モスクワ便の乗客は至急連絡してください」

モスクワ市はテレビやラジオなどの伝統的マスメディアだけでなくテレグラムなどSMSを通じて悲鳴にも似た呼びかけを続けた。しかしそもそもクレムリンの危機感は薄く、帰国者には2週間の自主隔離が要請ベースで行われただけだった。

モスクワ市長ソビャーニンの直言

その中で動き出したのはプーチン側近の重鎮の一人であるソビャーニンモスクワ市長だ。3月15日、地方の知事で構成される国家評議会の新型コロナ対策部会が設置され、そのトップにプーチンによってソビャーニンが任命された。ソビャーニン自身の働きかけである。保健衛生担当のゴリコワ副首相など政府のメンバーも配下に入った。

そして3月24日、クレムリンでプーチンとソビャーニン市長、副首相、保健相、公衆衛生主任医師の少人数の会議が開かれた。ここでソビャーニンはプーチンにもっと迅速な措置を取るよう直言している。

「感染者の数が問題ではなく増加率が高いことが問題です。深刻な状況が生まれようとしています。実際の感染者ははるかに多いのです」
「感染地域の外国からの帰国者は大きな問題です。遅かれ早かれ感染が表面化するでしょう。今感染者の有る無しに関わらず、あらゆる地方で感染拡大に備えるよう、指令を出しましょう」

プーチンが憲法改正の全国投票の延期を決定し、新型コロナウイルスについて初めて国民に呼びかけたのは翌25日である。「皆さん、わが国でよくあることですが、自分には関係ないと思わないでください。皆さん一人ひとりに関わることです」。

そして、プーチン自身が自らに関わることを示してしまった。視察した病院でプーチンを案内した医師が新型コロナウイルスに感染していることがその後明らかになったのである。これ以後プーチンは、モスクワ郊外の大統領公邸に籠り、もっぱらリモートコントロールで国を動かすことになる。

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