コロナ禍のロシア、7月1日正念場のプーチン モスクワはピークアウトも地方に感染広がる

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2月夜のクレムリン(筆者撮影)

2月の終わりから3月にかけて、プーチンとクレムリンの政治マシーンは憲法改正の最終的な仕上げにかかっていた。プーチンが1月の年次教書で提案した内容は以下のとおりである。

①大統領任期を2期に制限する、②下院議会・国家院に首相の指名、副首相、大臣の任命についてこれまでよりも強い権限を与える、③地方の知事などで構成される国家評議会を、内政外交の基本方針を策定する憲法上の公式の機関とする。

これまでの大統領任期はカウントしない

大統領中心の国家体制を維持しながら、権力のバランスを多角化する改正である。この当初案の通りであるならプーチン大統領の任期は2024年までの今期で最後となる。しかし2月の終わりに、クレムリン政治のベテランで内政を隅々まで知り尽くしたスルコフ前補佐官が爆弾発言をした。

「憲法の政治システムを大幅に変えるのであるから、これまでの大統領任期は新たな改正憲法での2期に含まれるべきでない」

ロシア語では"オブヌレーニエ"。いわばこれまでの任期を「チャラにする」という提案だ。クレムリン周辺から観測気球を上げたのである。そして3月10日、オブヌレーニエを世界最初の女性宇宙飛行士であるテレシュコワ下院議員が提案し、憲法改正案が最終的に議会で承認された。

プーチンが全国投票を4月22日に決定したのは3月17日だ。クレムリンはタス通信によるプーチンへのインタビューを次々と発表して、国民投票をプーチン大統領の信任を問う投票と位置づけ、プロパガンダマシーンは全速力で動き始めていた。

3月19日に発表されたインタビューでは、プーチンは2024年以後何をするつもりかと聞かれて、「権力の源泉は国民であり、国民の気持ち次第だ」と答えている。プーチンはこの時は2024年以降も、大統領として続投するかしないかにかかわらず、自らのイニシアチブで政治を動かす確信を持っていた。しかしそのころ足元のモスクワでは、新型コロナウイルスが水面下で蔓延していたのである。

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