多忙で孤立「壊れる教員たち」の過酷すぎる現実

若手が上司に相談できず1人ですべて抱え込む

田中さんのような事例は特殊ではない。「若手が上司に相談できない教育現場」という実態は、文科省の調査でも浮き彫りになる。

2013年に公表された「教職員のメンタルヘルスに関する調査結果」(全国の小中高200校を無作為抽出、回答数約5000人)によると、管理職以外の「教諭」が、不安や悩みを含む「ストレス」の相談を上司に「よくしている」割合は4.7%。「ときどき」を含めても35%しかいない。

上司に相談できるか否かは、問題を具体的に解決できるかどうかが重要なポイントでもある。それなのに、これらの年代は自ら抱え込むか、同僚に相談するかなどの対応しかできなかった。その同僚相手に自らの相談をするかどうかについても、「よくしている」は16.2%しかない。上司にも同僚にも相談しない、できないという荒涼とした風景が見えるようだ。

精神疾患で休職する教員の数も高止まりしている。

文科省の「公立学校教職員の人事行政状況調査」(2018年度)によると、精神疾患を原因とする教員の休職者は、2007年度以降5000人前後で推移しており、2018年度は5212人を数えた。平成元年だった1989年度の1037人に比べると、今の水準はおよそ5倍。教員の採用抑制が続く中、高止まり傾向は顕著だ。

教員の自殺も同じ状況にある。厚生労働省が集計・公表をしている調査によると、自殺した教員数は2018年では93人に上った。「勤務問題」が最大の原因であり、次に「健康問題」と続く。「健康問題」でもうつ病が主な要因を占めた。自殺者全体の傾向で言えば、2013年から100人前後を行き来している。

子どもをめぐる状況は複雑化しているのに…

こうした実態や各調査を踏まえ、東京都教職員互助会・三楽病院の真金薫子医師(精神神経科部長)は次のように訴える。

真金薫子医師(撮影:フロントラインプレス)=写真は一部加工しています

「教員の数を早急に増やすべきです。1990年代後半に『学級崩壊』が注目され、教育現場の実態が問われましたが、今のほうが現場は複雑で大変だと考えています。ここに訪ねてくるのは、40代が最も多い。その次に20代と50代。ベテランもストレスを抱えている一方、20代がここ最近、増えてきています。2000年代から教員の大量採用を行っており、母数が増えてきているからか、と。内容を順番付けすると、生徒指導について、職場での人間関係、授業での教え方と保護者対応でしょうか。

子どもをめぐる状況は複雑化しているのに、ほかの先生と問題を共有できていないと感じます。本来は『チーム学校』として問題解決に取り組まないといけないのに、個人プレーになっている。背景にあるのは、先生一人ひとり、仕事量が多いという現実です」

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