多忙で孤立「壊れる教員たち」の過酷すぎる現実 若手が上司に相談できず1人ですべて抱え込む
つねに孤独 ウソをついて教員を辞めた
北関東にある小さな飲食店で田中まさるさん(仮名)に会った。20代。5月の水曜日、夜7時。昼間は真夏のように暑かったのに、外は激しい夕立になっている。
「つらくて、教員を1年で辞めました。僕、この町にいないことになっているんです。『東北の実家に戻らなければならなくなった』とウソついて、職を辞めたんです。だから実名や写真は勘弁してください」
田中さんはなぜ辞めたのか。
「生徒指導で悩みがあっても誰にも相談ができないんです。担当している部活動では、言うことをきかない子もいて。昔みたく、ヤンキーってほどではないんですけど、周りと違う行動をし、かき乱す子が何人かいるんです。
『いい加減にしなさい』と生徒を自分のもとに引き寄せたことがあるんですが、『死ね死ね。わー、胸ぐらをつかまれた最悪』と言われ……。そうした子のために何ができるのか、悩んでいました。でも、同僚教員には、『誰しも直面していることだから。キツかったけど、俺らも乗り越えてきたから、君も乗り越えて』という雰囲気が根付いていました」
関東の大学を卒業し、出身地での教員を目指した。正規採用の試験は落ちてしまい、臨時採用の形で公立中学校の教員になった。
「40人ほどの教員がいました。自分は3年生のクラスで副担任。運動部の副顧問。先生になって2日後です。あれっ、と思った。研修もなく、すぐ現場に出されました。新人ですよ? 『わからなかったら聞いて』と言われたのですが、聞けないんですよ。
職員室ではみんな黙々と仕事をしていて、雑談のような会話はいっさい聞こえない。生徒は自分の言うことをなかなか聞いてくれないし、授業の内容はきちんと理解できているのか、と。保護者との対応も、これで大丈夫なのかと不安でした」
教員の仕事は「つねに1人で孤独だった」と田中さんは振り返る。当然、日々の仕事も忙しかった。
「部活の朝練があるので、朝6時には学校にいました。授業の準備などで夜は10時くらいまで。あと、先輩より先に帰れなかったんですよ。それが暗黙のルールとして根付いていました」
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