SNSの「中傷被害撲滅」が一筋縄でいかない理由 ツイッタージャパンの笹本社長に聞いた

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――一方で、現行のプロバイダ責任制限法では、情報開示請求をする側に大きな負担がかかり、匿名の加害者より実名の被害者が低い位置にいるといえます。

繰り返しになるが、われわれとしては各国の法制度に基づいて運営するということに尽きる。国が開示請求のプロセスをもっと簡単にしていくというのであれば、もちろん会社としてそれに対応していく。プロセスが難しいことや時間がかかることが指摘されているのは承知しているが、法制度を超えた開示対応をすることにもリスクはある。

いい行動も悪い行動も、起こしているのは人

――新型コロナの感染拡大で、リアルに代わってサイバー空間でのコミュニケーションが一段と拡張した中で、今後もツイッターに注がれる目はさらに厳しくなりそうです。

サイバー空間特有の問題が噴出しているのか、それともリアル世界で起きていた問題がサイバー空間でも展開されているのか……。これは皆さんがどう思うのか問いたいところでもある。

笹本裕(ささもと・ゆう)/1988年獨協大学法学部卒業後、リクルートに入社。2007年から日本マイクロソフトで常務執行役員など要職を歴任。そのほかMTVジャパン、ドリーム・フォーでは社長を務めた。2014年2月から現職(撮影:尾形文繁)

いい行動も悪い行動も、実際に起こしているのは人。人なくしてプラットフォームが存在する意味はない。中傷被害に対処するために、プラットフォームとしてできることを探っていくのはもちろんだが、それ以前に、人間の行動、思考そのものをもっと学んで、解明していかなければならないと思っている。

トランプ氏がサインした大統領令などをとっても、ツイッターのような言論プラットフォームが向き合わなければならない課題は非常に難しいものだと感じる。(大統領令が)現実のものとなれば、自由な言論を侵食し、未来を脅かす可能性があると思う。そしてこういうことはアメリカ以外の国でも十分起こりえる。

新型コロナで世界が混乱する今、SNSの可能性と課題、両面がより顕在化してきたと感じる。ツイッターとして健全化に向けた取り組みを強化するとともに、今後は業界団体やさまざまなステークホルダーを通じた議論や情報共有も深めていきたい。

長瀧 菜摘 東洋経済 記者

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ながたき なつみ / Natsumi Nagataki

​1989年生まれ。兵庫県神戸市出身。中央大学総合政策学部卒。2011年の入社以来、記者として化粧品・トイレタリー、自動車・建設機械などの業界を担当。2014年から東洋経済オンライン編集部、2016年に記者部門に戻り、以降IT・ネット業界を4年半担当。アマゾン、楽天、LINE、メルカリなど国内外大手のほか、スタートアップを幅広く取材。2021年から編集部門にて週刊東洋経済の特集企画などを担当。「すごいベンチャー100」の特集には記者・編集者として6年ほど参画。2023年10月から再び東洋経済オンライン編集部。

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