SNSの「中傷被害撲滅」が一筋縄でいかない理由 ツイッタージャパンの笹本社長に聞いた

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ツイッタージャパンの笹本社長が、ネットサービスにおける「役割」と「責任」について語った(写真は2019年11月に撮影、撮影:尾形文繁)
女子プロレスラー・木村花さんの死をきっかけに、ツイッターなどのSNS上での誹謗中傷を問題視する動きがいっそう強まっている。国では罰則を含む法規制強化に向けた議論も進み始めた。個々の事業者や業界団体による自主規制とどうバランスが取られるのかが注目される。
世界に目を転じれば、アメリカではブラック・ライブズ・マター(黒人差別撤廃に向けた運動)やトランプ大統領発言などを巡り、ツイッター上での健全な議論の在り方が問われ続けている。5月にはツイッター社がトランプ氏の投稿に対し、誤解を招くおそれのある情報を含むとして「誤情報警告ラベル」を表示。トランプ氏はこれに対抗し、SNS企業に与えられている免責による保護を制限する大統領令に署名し話題となった。
新型コロナウイルス感染拡大という世界的な危機を経て、SNSをはじめとするネットサービスにおいてはその「役割」と「責任」、両方が今まで以上に広がったといえる。サービス事業者はこの現実にどう向き合うのか。ツイッタージャパンの笹本裕社長に聞いた。

恣意的な運用は行っていない

――木村花さんの件をどう受け止めていますか。

非常に心を痛めている。場の健全性を担保することはSNSを運営する企業にとって一丁目一番地の課題だ。わが社はもちろん、業界全体で直視しなければならない。

ツイッターでは悪意あるツイートに対し、グローバルで共通のポリシーを基に対応を行っている。「日本法人では(ツイートやアカウントの削除において)恣意的な運用を行っているのでは」という憶測も飛び交っているが、決してそのようなことはない。何をもって「表現の自由」とするかなど、前提条件を日本法人で独自に解釈することすらない。

一方でこの共通のポリシーも、世界情勢の変化に合わせてアップデートし続けている。直近では、相手の人間性を否定するような言葉使いを禁止対象に含めるため、ヘイト行為に関するルールを刷新した。また、展開する各国で法制度が異なる面もあり、そういった違いへの個別の対応は行っている。

――ツイッターにおける誹謗中傷の実態をどう把握していますか?

ケースによる違いがあり一概には言えない。ただ、外部の研究などで明らかになってきているのは、(攻撃的な内容を含め)繰り返しツイートしているのはごく少数の人だということ。大半のユーザーが健全に使っているわけだ。スパム的なもの、悪質なものに対しては当然、当社側での対応も進めているが、「ブロック」「ミュート」など、嫌なものを自分のタイムライン上で非表示にできる機能も設けているので、自衛の手段として使ってほしい。

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