採用の「草食化」が潤いの源泉
求人を出している企業からおカネをいただき、企業と求職者の間に入ってビジネスをしている人材業界。さらに考えを進めていくと、人材業界は企業と求職者の間にブラックボックスを作ることで成り立っているのではないかという仮説が見えてきます。
ブラックボックスを作ることで、企業側は、自らが主体的に採用することができず、すべてを人材紹介会社に任せきりになる。求職者側は、自らの選択肢や可能性を考え合わせながら主体的にキャリアを作ることができず、人材紹介会社を駆け込み寺のように利用する。こうして採用側と求職者側が主体性をもって直接、やり取りをしなくなればなるほど、人材業界は儲けを出すことができるのではないか。
極論してしまうと、求人を出す企業側からも、仕事を探す求職者側からも牙を抜き、「草食化」することで潤っているのが、人材業界なのではないかという疑問が湧いてきたのです(経営戦略に基づいた人材採用戦略を提案して、企業の右腕となるヘッドハンターもいるので、もちろん、すべてがそうではありませんが、誤解を恐れずにわかりやすくお伝えするために、あえて極端にお話ししてみました)。
流通革命を人材業界に
この状態は、eコマースが起こる前の小売り流通業界に似ています。メーカーは、買いたい人と直接、アクセスする術がなく、問屋を通して商売をするのが常識でした。また、買いたい人も値段や商品の質を比較する術がなく、地元のお店に並んでいるモノを購入するしかなかったのです。
その流通構造に革命を起こしたのが、楽天市場などのeコマースプラットフォームです。インターネットを使ってマーケットを作った初期の頃は、売り手も少なく、買い手も少なかったはずです。メーカー側も、正直なところ問屋に任せたほうが確実だし、楽だと感じていたことでしょう。
しかし、インターネットが社会に浸透するにつれ、まずは買い手側が、「安いし、夜中でも早朝でも買えるし、家まで届けてくれるから便利!」というメリットに気づきました。そして売り手側も、「けっこう売れる!」という事実に気づき始めたのです。
そのあとはいい循環の始まりです。いつの間にか売り手も買い手も「肉食化」し、直接取引が当たり前になりました。
とはいえ、問屋が絶滅したのかといえば、そんなことはありません。彼らは彼らでさらなる付加価値を提供し、eコマースでは得ることができないサービスを展開しています。
これと同じような革命を、採用の場にも起こせないだろうか? 僕はそう考えました。人を探したいというニーズと、仕事を探したいというニーズは、モノの売買と同じようにマッチングしやすいはずです。
こうして僕は、自分の転職活動を通じて、「ビズリーチ」という新しいインターネット事業のヒントを得たのでした。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら