会社選びで「社風」より重要なたった1つのこと 「どの会社で働くかが大事」という大ウソ
そこで大抵取り上げられるのは「企業文化」です。ある企業には「家族のような文化」があり、ある企業には食品を寄付するなど「食事を通じて健康的で幸福な生活を」という文化がある、などです。あたかも、そういった文化があったからこそランクインできたかのようで、まさに文化は成功要因に思えてきます。
しかし、そのような文化に関して、入社後に自分の裁量でできることはほとんどありません。「社内託児所を設ける」「仕事時間の20%を自分の好きなことに使える」「社屋にソーラーパネルを設置する」といったことは、どれもすばらしい取り組みですが、あなたの実際の仕事世界を構成する日々のプロジェクトや締め切りとはまるで無関係な、どこか遠くで行われていることなのです。
ある会社で働くということがどういうことかを、外から見て理解するのはとても難しいといえます。
「自社の人」と意見が合わないジレンマ
仕事経験の最も重要な側面――仕事上の業績や離職率、欠勤日数などに決定的に大きな影響を与える側面――を非常に正確に測定できる8つの質問があります。(これらの質問にYESと答えた数が多いほど、エンゲージメントが高い)
2. 仕事で「自分に期待されていること」をはっきりと理解している
3. 所属チームでは「価値観が同じ人」に囲まれている
4. 仕事で「強みを発揮する機会」が毎日ある
5. 私には「チームメイト」がついている
6. 「優れた仕事」をすれば必ず認められると知っている
7. 「会社の未来」に絶大な自信を持っている
8. 仕事でつねに「成長」を促されている
もしも仕事経験の大部分が、どの会社で働くかでおおむね決まるのなら、8つの質問に対する回答は、同じ会社内のすべてのチームのすべてのメンバーで大体同じになるはずです。
しかし、現実はまったく異なります。
ばらつき具合を示す統計的尺度に、データの取る範囲を表す「レンジ」がありますが、会社間のレンジよりも会社内のレンジのほうがつねに大きくなるのです。仕事経験のばらつきは、異なる会社間よりも同じ会社内でのほうが大きくなります。A社・B社の会社間よりも、社内のチーム間のばらつきのほうが大きいのです。
データを詳しく調べると、8つの質問のスコアが低いチームは、メンバーが離職する可能性が高い傾向があります。例えば、あるチームの8つの質問のスコアが会社全体の上位50%から下位50%に転落すると、そのチームへのメンバーの離職率は45%上昇するという結果が出ました。
つまり、従業員がここで働くのはやめようと決めるとき、その「ここ」とは会社ではなく、チームを指すのです。
悪い会社のよいチームに配属された人は、会社にとどまる確率が高いでしょう。しかし、よい会社の悪いチームに入った人は、長くとどまらない確率が高いと予測できます。
これは、くしくもイギリスの思想家・哲学者のエドマンド・バーグが残した「社会の中で自分が属する小さな一隊を愛することが、公的な愛情の第一原理、いわば萌芽なのだ」という言葉どおりです。
どの会社に入るかは大事かもしれませんが、どの会社で働くかは重要ではありません。「どのチームで働くか」が重要なのです。