「需要の崩壊」始まったアメリカの最悪シナリオ

5月雇用統計を安心できないこれだけの理由

アメリカではロックダウンが解除されたものの、供給ショックに続いて、需要の崩壊が起き始めている(写真:REUTERS/Yuri Gripas)

パンデミックは収まらず、警察の暴力行為をめぐる抗議デモが激化し、緊張感の高まるアメリカ。だが、経済では3カ月ぶりに楽観的な雰囲気が漂うようになっている。

5月の雇用統計では就業者数が数百万人と増加し、失業率が低下。失業率のさらなる悪化を予想していた市場にとっては大きなサプライズとなった。経済の再開は進み、新型コロナウイルスによる死亡率も徐々に下がってきている。経済が深い穴から脱しつつある中、トランプ政権は見栄えのする指標を成果として掲げ始めた。

株価と実体経済の「乖離」

回復の兆しが現れているのはいいニュースだ。だが、リスクもはらんでいる。焦点がぼやけ、自己満足に陥るリスクである。

経済に関する一般の議論を見れば、すでに混乱が広がり始めていることがわかる。経済が激しく崩壊しているにもかかわらず、わずかな回復をもって「危機が回避された兆し」と考える人が増えているのである。株式市場には、この種の楽観が間違いなく存在する。株価は今年に入ってから、1%ちょっとしか下落していない。

だが、経済活動崩壊の影響が今後何カ月、あるいは何年にもわたって続いていくことを予見させる確かな証拠は多数見られる。

事態を収束させられなければ、大規模な悲劇が起こり、人々にいつまでも消えない傷跡を残すおそれがある。

というのも、経済の根幹がズタズタになっているからだ。その被害は、従業員と経営者、企業と納入業者、借り手と貸し手の間にある無数の関係に及んでいる。深刻な経済危機の歴史と現在入手可能となっているデータの双方が示すように、巨大な影響は遅れてやって来る。

「(現実を)否定する動きが多数見られる。1930年代もそうだった」と、カリフォルニア大学デービス校の歴史学者、エリック・ローシュウェイ教授は言う。教授は大恐慌について幅広く執筆してきた。「大恐慌の初期段階では、誰もがこれを危機と認めようとはしなかった。問題の大きさを考えると政府の対応は不十分だったが、それでも『底を脱した』と宣言するのはとても早かった」。

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