「需要の崩壊」始まったアメリカの最悪シナリオ 5月雇用統計を安心できないこれだけの理由

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ビーチの再開や株式市場の盛り上がりほど注目されてはいないかもしれないが、目をこらせば、現在でもこれと同じ現象は至る所に見られる。

一見、素晴らしく見える5月の雇用統計がいい例だ。3〜4月に一時解雇された労働者の多くが5月に職場復帰を果たしたのは間違いない。いったん休業し、営業を再開したレストランで働いていた従業員とか、現場にもどった建設作業員などである。

だが、それでもなお雇用者数は2月時点に比べ1955万人も少ない。しかも、今回の回復の一部は5000億ドルを超える連邦政府の支援策によるものだ。中小企業向けの支援制度「ペイチェック・プロテクション・プログラム」の下、連邦政府は雇用維持を条件に給与費用を補助しているが、現行法のまま行けば、この措置は6月末に終了する。

休業措置がより広範な需要不足につながっている

さらに、需要の崩壊という、深刻だがゆっくりと進行する危機を指し示すデータもある。需要の崩壊は経済の随所に悪影響を及ぼすため、そのダメージはパンデミックによる休業以上に幅広いものとなる。

例えば、5月のISM(アメリカ供給管理協会)製造業新規受注は31.8と、景気拡大・縮小の節目となる50を大幅に割り込む状態が続いている。

また、5月の雇用は差し引きで増加したとはいえ、新型コロナの影響が直撃したセクター以外の企業でもレイオフ(一時解雇)の発表が相次いでいる。これは観光、外食産業などの強制的な営業停止が、より広範な需要不足へと波及していっていることを示している。

パンデミック第1波による封鎖措置の直撃を免れながらも、その後レイオフを発表した有名大企業はいくつもある。シェブロン、IBM、オフィスデポなどは、その一部にすぎない。

ロックダウンが原因で職を失った人は、経済の大部分が停止してしまっているため簡単には新しい仕事を見つけられない。休業の危機にさらされた企業は、出費をギリギリまで切り詰めている。例えばホテルは現時点では、どこも新しい設備や予約システムに投資したりはしないだろう。一見安全な商品でも、閉鎖されたセクターの関連需要は減ることになる。

シカゴ大学ブース・スクール・オブ・ビジネスの経済学者、ヴェロニカ・ゲリエーリ教授が言う。「ホテルが閉まっているので、自動車の販売は落ち込む。以前ほど人々が移動しなくなるからだ。レストランが閉まっているので、おしゃれな服も売れなくなる。人々は以前ほど、外出したいと思わなくなるからだ」。

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