中国で「コロナ後」の物価に下げ止まりの兆し 食品など除いたCPIは横ばい、PPIも底打ちか

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CPIとPPIは4カ月連続で低下したが、実体経済には底打ちの兆しも見え始めている(図表作成:財新)

中国では「コロナ後」の経済・社会活動の正常化とともに、物価のデフレ傾向に緩和の兆しが見えてきた。

中国国家統計局が6月10日に発表したデータによれば、5月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比2.4%上昇し、前月比では0.9ポイント低下。前年同月比の上昇幅は財新が調査したアナリスト予想の平均値(2.6%)をわずかに下回った。一方、生産者物価指数(PPI)は前年同月比3.7%下落し、前月比では0.6ポイント低下。前年同月比の下落幅はアナリスト予想の平均値(3.2%)より大きかった。

これらの数値だけを見てデフレが加速していると考えるのは早計だ。CPIの上昇幅が予想に届かなかったのは、食品価格の値上がり幅が大きく縮小したため。なかでも食品価格全体を押し上げていた豚肉の値上がり幅は前年同月比81.7%と、前月(96.9%)より15.2ポイントも低下した。生鮮野菜は前年同期比8.5%、果物は同19.3%それぞれ値下がりした。

供給と需要の回復速度にギャップ

広発証券のマクロ経済担当チーフアナリストの郭磊氏は、食品価格の値下がりはコロナ後の供給回復と需要回復の速度差が原因という見方を示す。農場の生産や物流の正常化で食品の供給は増えているが、飲食店やホテルなどの需要回復が相対的に遅れているためだ。食料とエネルギーを除いた5月のコアCPIは前年同月比1.1%の上昇で、前月比では横ばいだった。

本記事は「財新」の提供記事です

一方、PPIの下落幅が予想より大きかったのは、国際石油価格などコモディティ相場の下げ止まりが中国国内の物価に反映されるまで一定のタイムラグがあるためと見られている。興業銀行のマクロ経済アナリストの郭于瑋氏は、PPIは5月に底打ちし、6月以降は前年比の下げ幅が縮小していくと予想する。

とはいえ、新型コロナの打撃によるグローバルな需要縮小を背景にしたデフレ圧力は依然として大きい。中国の景気は短期的には幾分回復しそうだが、中長期的にはまだ楽観できない。

(財新記者:沈凡)
※原文の配信は6月10日

財新 Biz&Tech

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