総括すると、株式およびJ-REITの日銀の買い入れは、資産市場の価格を直接押し上げる効果を狙っていない限り、実体経済に対する政策としては意味がないことになる。一方、株価対策の政策としては成功したといえる。金融政策でそれをやるべきかどうかはかなり疑問だが、成功は成功だ。
ここでの問題は、今後、どうするかである。
出口戦略も深刻な問題だ(株式は国債と違って満期がないため、どこかで売却しないといけない)。
問題は「いつ買い入れをやめるべきか」、ということである。
今しかない。
今こそ「本質的な政策」に転換すべき時
国債買い入れ額の量的な目標(あるいは目処)の撤廃と合わせて、こちらも量の目標を撤廃して「無制限」に近い、額は決めないこととする。なぜなら、もともとの目的がリスクプレミアムの低下を促すことにあるから、これが金利のターゲットと同じ役割を果たすはずであり、買い入れ額の目標やメドとは対立する。ここで、リスクプレミアムを低下させる、という本質のほうに一本化するのである。
そもそも、日銀がいつ株式ETF(上場投資信託)を買い入れるか、というのは投資家(投機家)の間で常に憶測を呼んでいた。「午前中に下がったときに買う」とか、「日経平均株価が1万8000円を割ったら買う」とか、まさに適当に(願望で)憶測し、それをニュースメディアに分析として憶測を流布していた。それを明確化することになる。
すなわち、リスクプレミアムが高まったら、それに働きかけるために、買い入れを行うということである。それ以外の時には買わないということである。
こうなると、暴落のときの最後の買い手としての出動となり、中央銀行というよりは、まさに政府ファンドによるPKO(株価維持政策)になってしまうが、リスクプレミアムの低下を促すという目的からすれば、「8兆円買い入れる」と量のメドを設定するよりは正論である。
ここに、日銀の金融政策は大きく転換する。
「量」はすべて廃棄するのである。「量的緩和」を廃棄するのであり、量的・質的金融緩和から、普通の金融緩和に戻るのである。量という目標が異常であるから、あえて量的・質的といわなければいけなかったが、量がなくなれば、それはもちろん質的に金融政策を見るのであるから、質的、という言葉も要らないのである。
これは原点回帰であるが、21世紀の日銀の政策としては、大転換である。量を捨てて、金利という価格に戻り、インフレ、物価は指標であり、金利とリスクプレミアムを直接のターゲットとするのである。
これこそが、単なる出口戦略にとどまらない、新しい日常的な金融市場と経済に対応する、新次元の金融政策である。
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