日銀の量的緩和がもたらす致命的な3つの害悪 もはや「新次元の金融政策」に転換すべき時だ

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したがって、無制限の国債購入という文言を変更する必要がある。無制限ではなく、国債購入の方針として、量の明示はしない、という見解を公式に発表する。それが現在の日銀の最優先課題である。

論理的には非常に明快だ。イールドカーブコントロールで、長期金利をゼロに固定する目標がある、だから、量はそれに応じて結果として決まってくる。しかも目安を設けることですら、かえって、政策の予見不可能性を増やし、リスクを増やすことになる。イールドカーブコントロールだけに、「名実ともに一本化します」、と宣言すればよい。

「コロナショックが連鎖的な倒産を招き、危機が拡大したらどうするのか」、という質問にも、そのときは量のターゲットは関係ない。「10年物の利回りをゼロにするまで、買い入れるだけのことです」、と答えるだけのことだ。

「建前」を再度前面に押し出す効果がある

むしろ、逆側からの質問があるだろう。結局、ほとんど変化がないのだから、「実質的に変更なし」と言えばいいのではないか、という疑問があるはずだ。

そのとおりかもしれない。だが、単純だが、変更すればもっとも重要な直接的な効果として、無制限の買い入れというイメージを払拭し、財政ファイナンスはしない、という建前を再度前面に押し出す、ということである。

それでも政府の要求や世論(エコノミストを含む)からの圧力により、実質財政ファイナンスに陥る可能性も十分にある。しかし、それは残念だが仕方がない。ただ、無制限を残したままでは抵抗もできず、正論として議論することもできず、ただ財政ファイナンスになってしまうし、可能性も高くなってしまうだろう。それを抑えるということだ。

しかし、ここで議論したいのは、もっと理論的なことだ。

それは、「量的緩和」を理論的にも廃止するべきだ、ということだ。すなわち、金融政策において、「量」という概念を消去することである。「量的緩和」および「量」のターゲット一般を撲滅するということである。

なぜ廃止すべきなのか。

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