すでにそれは始まっている。中央銀行は、財政ファイナンスではない(政府の借金を直接引き受けているのではない)と強調しつつも、政府の発行する国債の新発市場において、円滑な取引が行われるよう全力を挙げる、というような趣旨の説明をしている。
特に、アメリカのFRB(米連邦準備制度理事会)は顕著だ。長期国債の保有残高を減らしていたところからのスタートだったこともあるが、グラフをみると、まさに保有残高が、スカイロケットのように、連邦政府の発行額に連動して増えている。実質的には、アメリカも日本も財政ファイナンスを行っているのは誰の目にも明らかであり、建前として、否定しているだけのことだ。
問題は、それが長期にわたるのか、コロナショックへの緊急避難的な一時的なものにとどまるのか、ということだ。
まだアメリカはメリハリが利いている。だから建前を捨てる勢いで、実質的な財政ファイナンスになってもいいから、全力で買い支える。しかし、タイミングが来たらすぐに止める、というスタンスだろう。
一方、日本は、これまでも、財政ファイナンスではないと強く否定してきた。それでいながら、政府の政策や意向に合わせて、大量の国債購入を続けてきた。それだけでなく、加速度的に拡大してきた。
建前はかろうじて守られているものの、この7年間、実質財政ファイナンスを行ってきた。景気がよくなっても、出口には向かわず、国債保有残高を増やし続けた。
なし崩し的に政府に押し込まれる可能性が高い
この経緯からすると、足元では、財政出動の規模がアメリカ政府よりも日本政府のほうが小さいことから、実質的な財政ファイナンスであると半ば認めたような米FRBのようなスタンスはとらないだろう。だが、いや、だからこそ、なし崩し的に政府に押し込まれる可能性が高い。
実際、MMT(現代貨幣理論)という、世界的には眉唾物の経済理論およびさらに悪いことにそれに基づいた、かつ誤った拡大解釈で「インフレにならなければ、いくらでも財政赤字は増えてかまわない。それどころかインフレにならないのだから、財政赤字を増やさなければならない」、という暴論が、日本だけで蔓延していた。これが、さらに力を増して、加速している雰囲気が、ネット論壇(そういうものが存在するとすれば)に見られる。
しかも、コロナ対策としては、国民が「とにかく何でも金を配れ」、という雰囲気にあることから、歯止めが利かなくなる恐れがある。これが財政破綻を招き、日本経済と日本社会を真の危機に陥れる、というのが、現在の日本における最大のリスクである。
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