二神能基・NPO法人ニュースタート事務局代表--成長主義から脱却した新しい日本人の可能性《私のアラサー論》
ニートや引きこもりの若者を十数年前から支援してきた。以前は支援対象の若者は20歳前後が中心だったが、そのまま年月の経過ともに年齢も上がり、今は30歳前後、アラサーになっている。
最初はアルバイトでも派遣でもいいからまずは働いてみる。そして最終的には正社員でフルタイムで働く、以前はそんな形態をイメージしていたが、実際に起きていることは、ワーキングプアの若者はずっとワーキングプアのままということだ。今の日本ではいったんコースから外れてしまうと、元に戻るのは難しい。
結婚して家族を養うという自立の道を歩むことができた子は1割前後。働いていてもほとんどの子は年収200万円台だ。
森永卓郎さんが年収300万円時代の本を書いたが、こちらからすればそれもうらやましいかぎりで、現実は200万円に届かないこともある。もちろん正社員で募集している会社はあるが、残業が長くて時給換算すればアルバイトのほうがいいなんてことが普通だ。それならばわざわざ正社員になることもない。
私の経験を言えば、まじめな若者ほど経済的自立を目指して正社員になろうとする。それは親世代がそう考えているからで、子どももその価値観を受け入れて一生懸命に努力する。しかし、理想と現実は違っていて、そのギャップに苦しむことになる。仕事中心主義は特に男の子を追い詰めてしまっている。
だから私もこの数年は、自立、自立と言わなくなった。むしろ気持ちを切り替えて、貧乏を楽しむくらいの気持ちでいればいいとアドバイスしている。都市部から少し離れればアパートを借りられるし、安売りスーパーなどのおカネがかからない「貧(びん)フラ」がそろっている。そんなに豊かでなくても十分やっていける。それに収入が少なくても、結婚すれば稼ぎは増える。
この大失業時代、大不況を楽しむくらいの気持ちでいたほうがいい。悩んでいても解決しないから、毎日の生活を楽しめばいい。