「正社員激減」コロナ不況が招く働き方の大変革 「正規と非正規の格差」が解消される期待も

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ここから先は、私の予想でもあり、期待でもあります。

202×年、政府は正社員化の方針を断念して、非正規労働者の増加と正社員の減少を容認します。そして、企業が正社員の雇用を維持する負担を和らげるため、すでに経団連などが主張しているように、正社員の解雇規制を緩和し、解雇の金銭による解決を認めます。また、経費控除・退職金の税制など優遇されている正社員の待遇を引き下げます。

ただ、それだけだと、日本中が貧しい労働者ばかりになってしまいます。そこで政府は、現在、税制・社会保障などで格差のある非正規労働者の待遇を引き上げるよう取り組みます。

つまり、正社員の雇用の安定性や待遇が下がり、非正規労働者の待遇が上がり、正社員だから有利、非正規労働者だから不利ということは少なくなります。

双方の差異や垣根が小さくなると、正社員は“正しい”、非正規労働者は“正しく非ず”という差別的な考え方もなくなります。

203×年、もはや正社員・非正規労働者という区分も用語も使われなくなり、晴れて日本から非正規労働者がいなくなります……。

もしも正社員制度を固辞したら…

逆に私の予想が外れて、国が10年後も正社員化の方針を堅持しているなら、日本はどうなるでしょうか。

「東京営業所」に勤める数百万人の正社員の年収は2000万円、それ以外の4000万人の非正規労働者・フリーランサーはダメ企業で働き年収300万円という格差社会・貧困社会になってしまう未来もありえます(東京と地方の賃金格差を見ると、社会はそういう方向に動き始めているとも言えます)。

どちらの未来を選択するのか。政治家・企業、そしてわれわれ国民は、現在のコロナ危機だけでなく、その先についても真剣に考える必要があります。

日沖 健 経営コンサルタント

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ひおき たけし / Takeshi Hioki

日沖コンサルティング事務所代表。1965年、愛知県生まれ。慶應義塾大学商学部卒業。日本石油(現・ENEOS)で社長室、財務部、シンガポール現地法人、IR室などに勤務し、2002年より現職。著書に『変革するマネジメント』(千倉書房)、『歴史でわかる!リーダーの器』(産業能率大学出版部)など多数。

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