「出るくい」を絶対に打たない、アメリカの教育
個性を尊重する国アメリカでは、ビジネススクールの授業中、学生からの質問攻勢がやみません。開始から5分、教授が次の説明に入ろうと間を置くその瞬間を逃さず、先手必勝とばかりに手を挙げる学生が必ずいます。
大抵は、次に話すことが答えになっているような、単に話の腰を折っているにすぎない質問ですが、教授は、「それは今から説明するから黙って聞いていなさい」とは絶対に言わず、丁寧に受け答えしてくれます。しばらく講義が進み、今度は別の学生が、聞いていけなくはないが、本来、自分でちょっと調べれば済むような内容の質問を発しても、教授は「Good question.」などと言ってきちんと答えます。
前座が終わると、今度は優秀な学生たちの出番。彼らのとっておきの質問に対しては、先生は「That’s an excellent question!」と褒めてから答えてくれます。さらに鋭い質問で完全に意表を突かれて答えに窮したときには、教授は「キミはどう思うんだい?」などと切り返しながら答えを探ります。アメリカでは、未熟な学生からのどのような質問も拒絶せずに、誠実に回答するのが教授の任務です。そのおかげで、学生は臆することなくクラスの議論に参加できるのです。
仮説を持って、グローバルな議論に参加しよう
ビジネススクールの経営・事業戦略系の授業は、一方的な知識の押し付けではありません。そもそも、「経営学」は教えることができても「経営」を教えることなどできはしません。こうすれば絶対に儲かるという方法論がわかっていたら、われわれビジネスマンも苦労はしません。教科書に書かれていることは「よくできた仮説」にすぎないのです。学生のほうがよりよい仮説を提示できたら、それを新たな仮説として取り入れたってかまいません。みんなが参加して議論し、「よりもっともらしい仮説」を構築することで「経営の理論化」を目指すのです。
優れた経営者の意思決定が迅速なのは、「こういう場面では、こうしたほうがよいに決まっている」という仮説を持って、現実の課題に取り組んでいるからです。
何に対しても自説を披露する人を、世間は「思い込みの激しいやつ」と非難しがちです。でも、仮説を持っているから議論が成り立つのです。人の話を素直に聞くだけの人は議論に参加できません。自分の意見をちゃんと持った日本人が、ビジネスシーンやソーシャルネットワークを通して、グローバル社会での議論にどんどん参加して存在感を高めることが、ニッポンブランドの正当な評価へとつながっていくのではないでしょうか。
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