起業家スーパー官僚が挑む、1000人留学計画 グローバル人材の日本代表が生まれる日
バリバリの起業家が官庁に
ここ数年、盛んに報じられる若者の内向き傾向。実際、日本の留学生は、2004年の約8.3万人から2010年には約5.8万人にまで減少している。実に3割ダウンだ。この減少率は、少子化の影響を加味しても、大きいと言える。
そんな状況を打破すべく、文科省は昨年9月、官民連携のグローバル人材育成プロジェクトを新たに立ち上げた。「トビタテ!留学 JAPAN」というキャッチコピーを掲げ、日本人留学生を2020年までに12万人へと倍増させることを目指す。まず1年目となる今年は300人、来年以降は毎年1000人を世界へ送り出す計画だ。
このプロジェクトが斬新なのにはいくつか理由がある。
ひとつ目に、リーダーの人選だ。プロジェクトリーダーを務める、船橋力氏は、幼少期をアルゼンチン、ブラジルですごした帰国子女。上智大学を経て、伊藤忠商事で務めた後、2000年に企業と学校向けに教育プログラムを提供するウィルシードを創業、2012年に事業売却した。2009年には、ダボス会議のヤンググローバルリーダーにも選ばれた、バリバリの起業家だ。
「一昨年に自分の会社を売却して、次のチャレンジを探していた。自分の中でキーワードにしたのは、グローバル、イノベーティブ、ソーシャルの3つ。今回のプロジェクトはそれにぴったり合った。実際に文科省で働いてみると、学ぶことは多いし、思った以上に楽しんでいる。夜中まで働いて、週末に働いても大丈夫。この年になって初めて、人間はメンタルな生き物だと気付いた」(船橋氏)。
2つ目の特徴は、資金面、人材面で企業との連携を深めている点だ。
留学資金として、企業から200億円の調達を目標に設定。企業のニーズに応えるべく、「新興国プログラム」「理系人材プログラム」「世界TOP100大学プログラム」といった、実践的なプログラムを用意する。参加企業は、奨学生の選考にあたって審査員として参加できるうえ、留学生ネットワークの情報にもアクセスできる。つまり、有望な学生にいち早く目をつけることができるのだ。
プロジェクトを運営するメンバーとして、民間から、留学、マーケティング、広報のプロなどを募集。人材採用に関しては、転職サイト「ビズリーチ」が全面的に支援している。その狙いを同社の南壮一郎社長はこう語る。
「こうしたプロジェクトの求人募集は、通常であれば、文科省の外郭団体のホームページに載って、大半の人は知らないままで終わってしまう。これがいちばんの問題。このプロジェクトを成功させるためには優秀な人がほしい。だから、ビズリーチの29万人の会員への告知などにより、協力したいと思った」
3月3日時点で、すでに1000人を超える応募者が集まっているという。