留学生活で学んだ、「海」に漕ぎ出す勇気 社会的な評価よりも大切なこと

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 アメリカの大学というと、ハーバードなどのアイビーリーグばかり注目されるが、ほかにも一流校は多い。その代表格がリベラルアーツカレッジだ。知識詰め込み式ではない、考える力を養う教養教育により、多くのエリートを輩出している。トップリベラルアーツカレッジではどのような授業が展開されているのか。東大をやめ、全米No.1のリベラルアーツカレッジに入学した著者が、現地からレポートする。

不安の白から希望の白へ

皆さんは高校生の時、どんな人生計画を立てていましたか?

私自身は、有り体に言ってしまうと、東大文一→法学部→弁護士という、いわゆるエリート街道を進めたら、経済的にも社会的地位的にも手堅いな、なんて打算的かつ保守的な考え方をしていました。敷いてもらったレールの上を歩むことは「安全」だし、社会的に評価の高い人生を送ることが「良い」ことだと思っていました。何も決まっていない、真っ白な人生プランなんて、地に足がつかない感じで不安だったのです。

しかし、留学によって、このプランは白紙になりました。と同時に、留学によって、不思議なことに今まで不安にしか思えなかった白に、希望を感じるようになってきたのです。

さて、唐突な始め方をしてしまいましたが、以上は私がStorytimeというイベントで話をしたときのイントロの一部です。Storytimeとは、ウィリアムズカレッジで毎週日曜日の夜9時に行われるイベントで、1人の学生が、15分間、自分の人生について皆に話をする、というものです。

前回の記事で紹介したMysticでもStorytimeをやろうということになり、ある日指名を受けて、私が話をすることになったのでした。

留学によって起こった価値観の変化

話の準備をする中で、そもそも自分がどうして白い人生計画に不安を感じていたかを考えてみたとき、自分の価値を肩書き(学校や職業)に求めていたからなのではないかと思いました。今考えると恥ずかしく、情けない話なのですが、自分の価値を高めるためには、社会的評価の高い学校や企業に所属することが、最短で確実な方法だと思っていたので、進むべきレールのない人生に不安を覚えていたのだと思います。

ただ、アメリカ、というかウィリアムズカレッジに来てからは、頼りだった肩書きが全く通用しなくなりました。日本にいたときは、「東京大学に行っています」と言っただけで、実際に証明をする必要もなく、「この人はある程度の論理的思考力のある人間だ」と相手が思ってくれて、そのおかげで、楽に物事を進めることができたこともありました。

しかし、ウィリアムズでは東大のことをほぼ誰も知りませんでしたから、肩書きではなく、自分に何ができるのか、ということを、目に見える形で周りに証明をしなければなりませんでした。ただでさえ英語ができないわ、アメリカの文化は知らないわで、うまくいかないことばかりではありましたが、おかげで今では、自分の価値というものを、肩書きといった外面的なものから、自分自身の能力という内面的なものに見出すことができるようになってきたと思います。

このように、自分の所属ではなく、「自分はどんな人間で、何ができるのか?」というところにアイデンティティを見出せるようになってきたことで、これまで可能性が感じられなかった白い人生プランに、無限の可能性を見つけることができるようになったのだと思います。

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