年収がいくら増えても「幸せ」には直結しない訳 10万円と1000円のワインの味は100倍違うのか

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ワインでたとえれば、お酒を買うお金のない人が500円のワインを手に入れたら、幸福度はぐんと上がるでしょう。普段500円のワインを飲んでいる人が、ぜいたくをして2000円のワインを飲むと、多少、幸福度は上がるかもしれません。

しかし、50万円のワインと100万円のワインの比較になると、ソムリエやワイン通でなければ値段の区別はつかないでしょう。普通の人がブラインドテストをされたら、どちらがどちらだかわからない人も多いでしょう。

図に描くと下図のとおりです。ワインの値段が上がっていくと、これに比例して満足度が上がっていくのではなく、だんだんと上昇率が低くなっていくのです。

(外部配信先では図やグラフを全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

つまり、幸福度は直線ではないのです。お金があればあるほど、高価なものであればあるほど、青天井に幸せになれる気がしますが、実はだんだんと幸せには影響しなくなっていくのです。専門用語では非線形性(線形=直線。つまり、非線形=直線ではないこと)と言います。人間の心は非線形なのです。実はこの人間の心の非線形性の解明こそ、プリンストン大学名誉教授のダニエル・カーネマンがノーベル経済学賞を受賞した研究なのです。

お金と幸福との関係を考えるうえで、心の非線形性はポイントになります。

年収7万5000ドルに「幸福度の壁」がある

年収にも同様の傾向があります。それを検証したのが、カーネマンが、調査会社ギャラップと共同で行った調査です。

次の図をご覧ください。カーネマンの研究結果を単純化して模式化したものです。年収7万5000ドルまでは、収入が増えれば増えるほど、幸福度も上昇しています。ところが、年収7万5000ドルを超えると、幸福度の上昇カーブが水平を描くようになります。

このラインを境に、幸福度と収入が比例しなくなるのです。まさに心の非線形性です。もちろん、これは平均値であって、個人差はあります。

また、この金額は、地域や職業によって、大きく異なります。マンハッタンのトレーダーなら100万ドルかもしれないし、「世界一幸せな国」と呼ばれているブータンの国民なら1000ドルかもしれません。

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