年収がいくら増えても「幸せ」には直結しない訳

10万円と1000円のワインの味は100倍違うのか

日本の一般的な会社員だと、いくらになるでしょうか。7万5000ドルを日本円に換算すると、約800万円です。アメリカの給与水準は日本より高く、国際比較は為替だけでなく購売力平価も考慮すべきなので、日本人に置き換えるともう少し低いかもしれません。

日本人の平均年収は、およそ440万円です。それよりちょっと上、500万~600万円あたりが、一般的な日本人の「幸福度の壁」ではないかと思います。「7万5000ドル」という金額はあくまでアメリカでの研究結果なので、この金額が一人歩きしないほうがいいと思います。

ではなぜ、あるラインで幸福度が頭打ちになるのでしょうか。カーネマンは経済学者として、さまざまな学術的考察をしています。簡単にいうと理由は大きく3つあります。

1つはワインの例で述べたように、あるラインを超えると「ぜいたく消費」になるからです。今は1000円も出せば、プロのソムリエは別としても、私たちにとっては悪くないワインを手に入れることができます。それが1万円のワイン、10万円のワインになったところで、幸福度は10倍、100倍にはなりません。

「ぜいたく消費」は、一見うらやましいと思いがちですが、実際にやってみると、想像するより幸福度は高くないのです。

また、1000円のワインを飲んで「最高に幸せだ」とアンケートに答える人は、3000円のワインを飲んでも、1万円のワインを飲んでも、「最高に幸せだ」と答えるはずです。これは統計調査の限界でもあるのですが、例えば7段階で聞いているとすれば、それより上の8段階目はないのです。よって、どこかで必ず頭打ちになってしまう。

一方、1000円のワインを飲んで「美味しくない、もっと高いワインが飲みたい」と思う人は、1万円のワインを飲んでも、10万円のワインを飲んでも、「こんなの嫌だ、もっと高いワインが飲みたい」と思うでしょう。1000円の自分にも、10万円の自分にも満足できない。やはり幸福度が頭打ちになってしまいます。

これこそが、多くの人が憧れる「ぜいたく消費」の正体といえます。華美な宣伝、広告、メディアの煽りに騙されないでほしいと思います。ぜいたく、ゴージャス、プレミアム感、ラグジュアリーを煽る広告は多いですが、これらは長続きしない幸せしかもたらさないのですから。

「満足」は幸せの一部分にすぎない

もう1つの理由は、年収が上がることによって満たされるのは満足度だけで、幸福度そのものではないということです。

満足度というのは、どう取るかにもよるのですが、使えるお金、住む家、乗っている車、食べるものなど、「さまざまなことがらにどれだけ満足しているか」を示す指標です。

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