飲食店を「倒産」させるコロナより深刻な問題

NY名店オーナーが20年来の店をたたむ理由

コンロと冷蔵ショーケースの背後に漂白剤と食器洗い用洗剤と油落とし用洗剤を垂らして、ガス台の裏の暗くて手の届かない隅から、調理中に落としてそのままになっている卵の殻やマッセルの貝殻、野菜クズ、空洞になった髄骨、試食用スプーン、ケーキテスター、トング、鉄板皿を一掃しようとしていたのだ。

以前はペンキの塗り直しやタイルの張り替え、配線修理のために7月に10日間の休店期間を設けるくらいの経済的余裕はあった。しかし、数日間の売り上げを失うことさえ、あるいは、この徹底的な掃除(やろうと思えば自分で十分やれる)にプロの清掃業者を雇う費用を捻出したりすることさえ次第に難しくなってきた。私が夜遅くまで残り、閉店後の店で大掃除をしていたのには、こういうわけがある。

ねっとりとした卵黄がつなぎから下の服へと染み、肌に達するのがわかる。髪はごわつき、飛び跳ねた汚れで安全ゴーグルの視界が悪くなっていくにつれ、私の中で動揺が広がっていった。この作業が楽だったことは一度もない。しかし、こんなにきついと感じるようになったのは、一体いつからだろう?

失業保険や融資を得るのも簡単じゃない

店を閉めてから2週間後、アシュリーはまだ失業手続きを済ませておらず、私も勧められた融資の申請をしようとはしていたが、電子申請書の自動入力機能のせいで3回も断念していた。さっと簡単に済ませられると思っていたがそうではなく、険しく厳しい道のりだと気づき始めた。誰も私を助けてはくれなかった。

エントロピーに逆らうために、毎日少しだけ空っぽのレストランに行った。電球は切れていたし、小さな冷凍庫はコンセントを抜いて再起動しなければいけなかった。ニューヨーク州労働省から失業通知が入った封筒が11枚届いた。その1週間後、次の5枚が届いた。その後、さらに6枚届いた。

融資なんて簡単に受けられると思っていたが、1週間電話をかけ続けてようやく3月25日に申し込みを済ませることができた。その1週間後の4月1日、「事業と個人のキャッシュフローが不適格である」という理由で断られた。私は電話で保険業者から説明を受けて大声で笑った。何もかもが厳しかった。

店を閉めてから21日が経っても、アシュリーは失業手続きができていなかった。当局は殺到する電話を処理するための新しいシステムを作っていた。苗字の頭文字によって電話ができる日が決められ、アシュリーが次に電話をかけられるのは木曜日だった。その日につながらなければ、次に頭文字Mの市民がかけられる日まで待たなければならない。

中小企業庁の低金利の災害ローンへのリンクが出回っていたが、ニューヨーク市は対象地域のリストに載っていなかった。「こんなのおかしいですよね?」と、私の会計士にメールしてみた。「そのうち更新されると思います」と、嫌味な笑顔の絵文字つきの返信が彼女から届いた。これが政府だ。政府が迅速に対応するのは税金の徴収のときだけだ。

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