中国では「コロナ後」の景気テコ入れを図るため、都市の交通渋滞や大気汚染を改善するために導入された自動車の購入規制を地方政府が緩和する動きが広がっている。5月21日、天津市政府は3万5000台分の購入許可を年内に追加発給すると発表。これにより、購入規制を実施してきた都市のうち北京を除くすべてで規制が緩和または撤廃された。
規制緩和の要望は自動車業界からも上がっている。国有自動車最大手の上海汽車の董事長(会長に相当)で全国人民代表大会(全人代=国会に相当)の議員を兼務する陳虹氏は、「消費促進にプラスの意義がある」として5月22日に開幕した全人代に購入規制の段階的な緩和の提言書を提出した(訳注:中国では有力企業のトップが全人代の議員を兼務し、業界を代表して政策提言を行う例が多い)。
だが、現時点の緩和策では力不足との見方が少なくない。中国の新車販売台数は新型コロナウイルスの影響で今年2~3月に歴史的な落ち込みを記録した後、4月は前年同月比プラスに浮上した。しかし販売回復の勢いは自動車業界の期待値には届いておらず、業界団体の中国汽車工業協会は2020年の通年の新車販売台数が前年比15~25%減少すると予想している。
購入規制の完全撤廃は非現実的
とはいえ、購入規制の完全撤廃は現実的ではない。そもそもの規制導入の目的である交通渋滞や大気汚染のコントロールが困難になるからだ。
そんななか、民営自動車大手の吉利汽車の董事長で同じく全人代議員を兼務する李書福氏は、現在は国税に区分されている自動車取得税を1対1の割合で国税と地方税に分割する改革案を提出した。それによって地方政府の財源を増やし、自動車購入促進の補助金や交通インフラの拡充、環境対策の強化などに充てるというアイデアだ。
より直接的な購入促進策として、自動車取得税の減免を求める声も少なくない。ただ中国の自動車市場は2019年から、すでに自家用車を持つ消費者の買い換えのほうが初めて自家用車を購入する消費者より多くなりつつある。このため業界関係者の間には、取得税の減免の効果は限定的との見方もある。
(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は5月25日
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