日本が外国人の「一律入国拒否」を貫く大問題 長期滞在者や外資系企業からは批判の声

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ヨーロッパ企業も怒りをあらわにしている。5月12日には、ロビー団体である在日欧州ビジネス協議会が「非和解的な」体制を糾弾する声明を発表している。「私たちは優遇されることではなく、日本が外国人を自国民と同じように扱うことを望んでいる」と、ヴァレリー・モシェッティ理事は説明する。

原則としてすべての外国人を排除する政策は、外国企業に対する日本の魅力を損なうことにもなっている。北東アジアの地域拠点を日本に置く企業は、日本国外へ出張させることができなくなっている。こうした状況が続けば、次に事業の地域拠点をどこに置くかを検討する際には、台湾や韓国を選ぶ可能性が出てくるかもしれない。

「外務省は現在、問題があることを把握している。しかし、法務省は外国人のことについては議論に応じてくれない」とある外交官は言う。

「ビジネス客」という曖昧な区分け

5月21日付の日本経済新聞によると、政府は「ビジネス客と研究者、留学生、そして観光客」の順に3段階に分けて入国許可を緩和していくという。

しかし、そもそも法的に「ビジネス客」という区分けはないうえ、記事によるとコンビニのバイトとして必要な研究者や留学生も優先的に入国を許可するとしている。一方で日本で長年生活し、税金を納めてきた長期居住者についてはまったく触れられていない。

実際、冒頭のフランス人男性は、父親の葬儀でフランスに帰った場合、日本に再入国できない可能性がある。5月22日、井上一徳衆議院議員は、外務委員会において日本に住む韓国人男性が、母親の葬儀で韓国に行ってから日本に戻ってこられない例を挙げた。

このときも法務省は、「特段の事情」がある場合に限って再入国は認めているが、何が特段の事情にあたるかを示すことは困難だとして拒否した。母親の葬儀が特段の事情に当たらなければ、何が相当するというのだろうか。法務省は早く何が特段の事情なのか明らかにする必要があるだろう。

安倍晋三首相は5月26日、EU各国首脳との電話会談で、「ハイレベルの協議」を行うが、日本における外国人長期滞在者をどうするかは、大きな議題の1つとなる。

レジス・アルノー 『フランス・ジャポン・エコー』編集長、仏フィガロ東京特派員

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Régis Arnaud

ジャーナリスト。フランスの日刊紙ル・フィガロ、週刊経済誌『シャランジュ』の東京特派員、日仏語ビジネス誌『フランス・ジャポン・エコー』の編集長を務めるほか、阿波踊りパリのプロデュースも手掛ける。小説『Tokyo c’est fini』(1996年)の著者。近著に『誰も知らないカルロス・ゴーンの真実』(2020年)がある。

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