黒川氏の賭け麻雀辞任「訓告」処分だけの大疑問 霞が関エリートの不祥事も後を絶たない…

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巷では、黒川氏の退職金が6000万円以上にものぼること、それが全額支給されることに不満の声が上がっている。確かに、今回の黒川検事長賭けマージャン事件の重大さから考えて、筆者も退職金の満額支給には大きな疑問を持つ。

本来であれば、黒川氏を停職とし、その間に賭けマージャン疑惑の全貌を調べ上げ、その後に適切な処分を下し、その結果に基づいて、検察庁法で定められた退職金を支給すべきであった。

黒川氏は、1981年東大法学部卒の63歳であるが、最近では、同年代の官僚、それも各省事務方トップの不祥事が相次いでいる。

まず、思い出されるのは、2018年4月にセクハラ問題で辞任した財務省の福田淳一事務次官。1982年東大法学部卒の事件当時57歳。福田氏は否定していたものの、飲食店内においてテレビ朝日の女性記者に対して「抱きしめていい?」、「胸触っていい?」、「手縛っていい?」などの発言を繰り返していた音声がユーチューブで公開され、辞任に至った。このときの処分も訓告であった。

もう一人は、2017年1月にも文部科学省の事務次官を退任した前川喜平氏だ。1979年東大法学部卒、当時62歳である。前川氏が辞任に至った直接の理由は、文部科学省の組織ぐるみの天下り斡旋が国家公務員法違反に当たるとされたことにあった。しかし、辞任後、歌舞伎町の出会い系バー通いをしていたこと、女性にお小遣いを渡していたことが報道され、世間を驚かせた。前川氏は女性の貧困問題の調査のために行ったと述べた。

前川氏が国家公務員法違反で受けた処分は、2か月間減給10分の1であった。この時は、前川氏と官邸が辞任をするかどうかでもめていたので、比較的厳しい処分がなされたものと考えられる。

霞が関のエリートに何が起こっているのか

このような例を見ると、霞が関のエリートには、世間の常識とずれてしまっている人がいるのではないか。

ここに出てきた黒川氏、福田氏、前川氏は、おそらく皆東大法学部の中でも成績はトップクラス、司法試験も国家公務員試験もトップクラスで突破し、検察庁、財務省、文科省に入ったスーパー・エリートなのに、何でこうなってしまうのかまったく理由がわからない。

あえてその理由をひねりだすとすれば、霞が関で周りからエリートと言われ、常に頭を下げられる環境にある。その結果、自分は何をしても許される、自分は世間の人間とは違う特権階級だと思い込み、自分を見失ってしまったのではないだろうか。

彼らに続く霞が関のエリートたちが、世間常識を失わず、自分を見失わず、そして、国民の期待する行政、司法を実現してくれることを願うばかりである。

植田 統 国際経営コンサルタント、弁護士、名古屋商科大学経営大学院(MBA)教授

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うえだ おさむ / Osamu Ueda

1957年東京都生まれ。東京大学法学部を卒後、東京銀行(現・三菱UFJ銀行)入行。ダートマス大学エイモスタックスクールにてMBA取得。その後、外資系コンサルティング会社ブーズ・アレン・アンド・ハミルトン(現PWCストラテジー)を経て、外資系データベース会社レクシスネクシス・ジャパン代表取締役社長。そのかたわら大学ロースクール夜間コースに通い司法試験合格。外資系企業再生コンサルティング会社アリックスパートナーズでJAL、ライブドアの再生に携わる。2010年弁護士開業。14年に独立し、青山東京法律事務所を開設。 近著は『2040年 「仕事とキャリア」年表』(三笠書房)。

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