「島耕作」作者が語る団塊世代の定年後のリアル 「弘兼憲史×松本すみ子」定年後について対談

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弘兼憲史(以下、弘兼):読ませていただいたんですが、僕が書いてきたことにも近くて共感できるし、データがたくさん入っているので、これは本当に役に立つなと思いましたね。

松本:ありがとうございます。具体的な方法については、みなさん意外と知らないんです。頭では「どう生きるべきか」なんてことはわかっていても、なかなか動き出せない。私も、弘兼さんの『俺たちの老いじたく』(祥伝社)を読ませていただいて、「そうそう、そういうことよね」と膝を打ちました。弘兼さんはいま70代ですが、この本は50代で書いたんですよね。

弘兼:そうです。ただ、50代の自分が言ったことと今の自分が思っていることが随分と違っていて、改めて読み直すと「俺、こんなこと言ってたんだ」とびっくりした(笑)。

若かりし頃に想像していたのとは随分違う

松本:わかります(笑)。弘兼さんといえば代表作「島耕作」シリーズ。島は1947年生まれだから、弘兼さんご自身の世代である団塊の世代のことを描かれてきたわけですよね。

松本 すみ子(まつもと すみこ)/アリア代表、「NPO法人シニアわーくすRyoma21」理事長。キャリアコンサルタント、産業カウンセラー、シニアライフアドバイザー。早稲田大学第一文学部卒業。IT企業に二十数年勤務後、2000年に起業。2007年には同世代が集うNPOを設立。行政・自治体・市民団体などにおいて、セカンドライフや地域デビューに関する講座の企画・運営・講師を担当、当事者目線での提言に特徴がある。企業や研究機関に向けてはシニア市場に関するアドバイスとコンサル、メディアなどではシニア世代の取材や執筆活動を行う。東京都主催「東京セカンドキャリア塾」講師

ところが今、その団塊の世代が厳しい状況に置かれています。定年退職してもまた働かなきゃいけないし、年金の問題もある。私たちが若かりし頃に想像していたのとは随分と違う人生になっているんじゃないかなと思うんです。

弘兼:厳しいのは確かですね。僕自身は若い頃に松下電器という大きな会社に入って、当時は終身雇用の時代だったから普通に働いていれば定年までそのままいって、あとは年金も退職金もあって楽勝、のはずでした。ところが現実にはそうはならず、僕と同世代の人々は下の世代から目の上のたんこぶみたいに言われています。

松本:弘兼さんが「島耕作」を描き出した頃は、この状況を想定できましたか?

弘兼:ある程度はできましたよ。とくに年金は絶対だめだなってみんな思っていましたから。例えば僕はいま社長をやっているので、結構な額の企業年金を払っていて。そうなると、中小企業の経営者はみんな正社員を雇いたくなくなるんですよね。

松本:目の上のたんこぶ扱いされる一方で、60歳の定年退職後に65歳まで希望すれば誰でも働けるという制度も始まっています。

弘兼:厚生年金をもらえる人は別として、生活に困っていて定年後も働かなきゃいけない人は、現実には結構多いんですよね。半分以上の会社では退職金は出ないですし。そう考えると、定年後のことを前向きに考えられるのは、ある程度余裕のある人だけかもしれないなと思います。

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