「島耕作」作者が語る団塊世代の定年後のリアル 「弘兼憲史×松本すみ子」定年後について対談

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弘兼:幸い、みんな元気で長生きしていますから、50代といわず、60、70代のマーケットもこれから注目されていいと思いますね。平均寿命までは14、15年あるじゃないですか。

松本:シニア向けのファッションとか化粧品とか、すごく売れているらしいですよ。しかも結構いい値段のものが。銀座なんか歩いていると、そこそこのお年寄りなんだけどすごくおしゃれな人をたくさん見かけます。

弘兼:だから、老人が増えて大変な時代が来る、というふうにマイナスに考えないで、そこに経済が動くところがあるんだ、と考えたほうがいいですね。

松本:私は、少子高齢社会になったから60歳過ぎても働けるようになったんですよ、とよく言います。人手不足だから、コンビニでもファストフードでも60代だったら喜んで受け入れてくれる。昔は60歳を過ぎた人を雇うことなんてなかったじゃないですか。でも今は、とくに女性だと喜んで雇ってもらえますから。

定年後に20年以上は生きることになる

弘兼:日本人の平均寿命はいま男81歳、女87歳ですが、それがこれからさらに延びていくとなると、定年後に20年以上は確実に生きることになるわけです。その20年をどう生きるかが、僕らには問われていると思います。

最終的なゴールはもちろん死ぬことですが、そのゴールテープを笑って切れるかどうか。経済的に豊かだったら笑って死ねるかというと、そんなことは決してない。いかに死ぬ瞬間に「自分の人生、これでよかったな」と思えるか。そのためにできることはたくさんあると思います。

松本:定年後のことを50歳になってから考えるのでは遅いとよく言っているんですが、現実には考えようとする人は多くないですね。

『俺たちの老いじたく 50代で始めて70代でわかったこと』(書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)

弘兼:僕もいろんな本に書いているのは、普通のサラリーマンだったら50歳の時点でそれ以上昇進できるかできないかが何となくわかるわけです。そこで「これで終わりだろうな」と思ったら、それ以上会社のために粉骨砕身することはない。60歳からの人生をどう生きるかという青写真を持って、土日の休みのうち半分はそれに従って行動する。

例えば蕎麦打ちをやりたかったとしたら、土日は全国の蕎麦の名店を歩いて回ってみる。蕎麦を1杯食べるために名古屋まで行って戻ってくる。今のうちにそうやって勉強していくと、後でいろんなところで役に立つんです。

だから、50歳って早いかもしれないけど、せめて定年までの5年か10年は、人生後半のために時間を費やしてほしいと思います。

弘兼 憲史 漫画家

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ひろかね けんし

山口県出身。早稲田大学法学部卒。松下電器産業(現パナソニック)勤務を経たのち、1974年に漫画家としてデビュー。現在、『島耕作』シリーズ(講談社)、『黄昏流星群』(小学館)を連載するほか、ラジオのパーソナリティとしても活躍中。

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松本 すみ子 キャリアコンサルタント

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まつもと すみこ / Sumiko Matsumoto

アリア代表、「NPO法人シニアわーくすRyoma21」理事長。キャリアコンサルタント、産業カウンセラー、シニアライフアドバイザー。早稲田大学第一文学部卒業。IT企業に二十数年勤務後、2000年に起業。2007年には同世代が集うNPOを設立。行政・自治体・市民団体などにおいて、セカンドライフや地域デビューに関する講座の企画・運営・講師を担当、当事者目線での提言に特徴がある。企業や研究機関に向けてはシニア市場に関するアドバイスとコンサル、メディアなどではシニア世代の取材や執筆活動を行う。東京都主催「東京セカンドキャリア塾」講師。

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