「マスクには、感染予防の重要な機能が4つあります。1つ目は外の粒子を取り込まないフィルター効果。2つ目が感染している人がウイルスを飛ばさないこと。3つ目がのどの保湿と保護。4つ目がウイルスで汚染されている手で顔を触らないこと。
このベトナムマスクは、1つ目の観点で×(バツ)、2つ目の観点で△(三角)、3と4の観点では〇(マル)という感じです。ただし、感染リスクの高い場所での使用は絶対に勧めません」
あまり知られていないが、大西准教授によると、のどの粘膜が乾燥するとウイルスに感染しやすくなるので、のどの保湿は大切だという。
マスクの特徴と限界を踏まえて、使う場所と状況に応じて正しく使い分けることが重要だ。
隠されていた30億円の契約
感染予防としてのフィルター性能は、ほとんど期待できないことがわかったベトナム製布マスク。現地では、排気ガスが直接顔にかかるのを防ぐために普及しているタイプだ。つまり、新型コロナウイルス対策のマスクとしては、目的外使用というべきだろう。
確かに、店頭からマスクが姿を消して入手困難な時に、緊急措置として輸入するなら、仕方がない側面もある。しかし、現在はフィルター性能が高い不織布のサージカルマスクが、苦労せずに入手可能になった。
アベノマスク問題を国会で追及している、参議院の福島みずほ議員(社民党)による情報公開の要求に対して、5月11日付で厚労省マスクチームが提出した資料がある。そこには、意外な事実が記されていた。
ベトナム製布マスクを輸入している、ユースビオ(福島市)は、2021年度予算で、新たに約30億円の契約を結んでいたのだ。
今月10日、厚労省の追加発注に関して、樋山茂社長に尋ねたところ、次のように答えている。
「ちゃんとしたものを納めたのに、こういう取材やらで嫌になりました。国民のためにと思ってやったけど、嫌になりました。なので、皆さんのせいでやめます」
また、厚労省マスクチームの広報担当者は、5月12日の取材に対して、こう述べていた。
「ユースビオのマスクは、介護施設等に第1回目の配布分で完了した。これから第2回目、第3回目の配布を予定している。新しい契約はあちら(ユースビオ)がされないと、オープンに言ってらっしゃるので難しいのではないか」
その後の取材で、約30億円の契約分は、4月15日に納品が完了していたことがわかった。
ユースビオに関して、報道が相次いだのは4月27日から5月上旬。これまで、同社と厚労省は、約30億円の契約について一切触れようとしなかった。
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