あれほど入手困難だったマスク。今月中旬ごろからは需給が緩和され、価格も低下してきた。その中で、新型コロナウイルス対策として登場した「アベノマスク」こと、政府の「布マスク」配布計画は、完全に周回遅れとなった感が否めない。全6300万世帯に配布予定のうち、届いたのは1割以下だ(5月18日時点)。
先行して介護施設等に届けられたベトナム製「布マスク」は、耳掛け部分の寸法が短すぎるうえ伸縮性がなく、装着できない人が多いという。それなのに、ベトナム製「布マスク」の第2回配布のために、約30億円の契約が結ばれていたことが判明した。
そもそも感染リスクが高いとされる現場で、布マスクの使用は適切なのか、聖路加国際大学・大西一成准教授に実証実験を依頼した。
これまで「福島の無名会社『アベノマスク4億円受注』の謎」(2020年4月30日配信)、「アベノマスク『耳が痛くて使えない』呆れた実態(2020年5月12日配信)と報じてきたが、次々と明らかになるアベノマスク問題の追及・第3弾をお伝えする。
医師も誤解しているマスクの機能
「マスクは他人に感染させないための道具。マスクは新型コロナウイルスを通すので予防はできない。だから、元気な人は基本的にマスクをつける必要はない──」
今年2月まで、感染症に詳しいと称する医師が、新聞やテレビで「マスク不要論」を盛んに主張していた。その影響もあって、マスクの装着効果を過小評価している人は少なくない。
日本では数少ないマスクの研究者である、聖路加国際大学の大西一成准教授(公衆衛生学)は、医師の一部に誤解があると指摘する。
「防じんマスクや、サージカルマスクでPFE試験(※)をパスした不織布でも、0.3マイクロメートル以下(1マイクロメートル=1/1000mm)の隙間があります。そのため、『0.1マイクロメートル以下の新型コロナウイルスは、不織布を通過してしまう』と話される方がいますが、それは大きな間違いです。
飛沫として外に出てくる新型コロナウイルスには、水分が付いており、0.1マイクロよりも大きい状態になるからです。それに、不織布はミクロのレイヤーがランダムに何層にも重なっており、例え0.1マイクロメートルでも、微粒子の不規則な動きであるブラウン運動によってほぼ100%カットできるということが私の研究でわかっています」
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