ここで注意したいのは、不織布のこの性能はあくまでも実験環境の下での数字ということだ。大西准教授によると、マスクの機能は、「フィルター性能」と「顔のフィット」の2つが重要になるという。
つまり、どんなにフィルター性能が高くても、顔にフィットしていなければ意味がないのだ。
漏れ率100%だった、アベノマスク
マスクを装着した状態の機能を評価するのが「フィッティングテスター」である。空気中に漂う0.3マイクロメートルの粒子量を、マスク内部と外部を約12秒間ずつ測定、その数値差を「漏れ率」として表す。
大西准教授が勤務する聖路加国際大学は、緊急事態宣言により通学停止中であるため、遠隔会議システムのzoomを利用して、実証実験を行ってもらった。
実際に届いたアベノマスクは、ガーゼを15枚重ねた構造になっている。まず、大西准教授は、一般の人が装着した状態をイメージして測定。結果は、漏れ率100%だった。
そこで、アベノマスクの周囲を押さえて顔にフィットさせて再測定すると──。
「漏れ率89.58%ですね。ガーゼ1枚の網目は500マイクロメートルですが、15枚重ねているので、粒子を約10%カットしていることが観察されました」
そして、介護施設等に配布された、ベトナム製布マスクを測定しようとしたのだが、これが想像以上に大変だった。
「僕には小さすぎますね。いや厳しいです。これで男女兼用のワンサイズですか?」
大西准教授には、無理やりマスクを引っ張って装着してもらうしかない。
「耳がひしゃげてますけど、なんとか付けました。あごがしっかり覆われていてフィット感はいいです。では測定を開始します」
結果は、漏れ率100%。そこで、ガーゼマスクと同様に周囲を押さえ込んで隙間を塞いで測定すると──
「やっぱり100%です。このマスクは、ブリーフみたいな生地を2枚重ねているだけですし、隙間が目で確認できる。おそらく100マイクロメートルくらい、髪の毛1本通るほどです」
今回の実証試験では、ガーゼマスクの場合、外の粒子の吸い込みを約10%程度ブロックしていたが、ベトナム製マスクにこうした機能は、ほとんど期待できないことがわかった。
大西准教授は、ほかにマスクがない場合のみ、つける意味はあると言う。
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