介護施設を運営する男性も、必要なのは布マスクではないと断言する。
「同じ布マスクなら、もうやめてもらいたいです。もし配布するならサージカルマスクのほうが役に立ちます」
前出の福島参院議員は、アベノマスク事業を中止すべきではないか、と指摘している。
「もう布マスクを配布する必要性はなくなりましたよね。それなのに、布マスクにこだわる理由がわかりません。税金の無駄遣いです。それに、不良品の検品に総額8億円の予算をつけていることがわかりましたが、これも絶対におかしい。検品なんて、納める企業の責任でしょう」
今月14日の厚生労働委員会で、なぜ布マスク事業にこだわるのか、という福島議員の質問に対して、厚労省の官僚はこう述べていた。
「医療機関に優先的に医療マスク(サージカルマスク)を確保するため、一般には布マスクでお願いする」
医療用マスクの不足はなお続いている
5月19日、私は東京都内で、新型コロナの治療にあたる都立病院の医師に会った。マスク事情について聞くと、彼は苦い表情を浮かべて首を横に振った。
「サージカルマスクやN95マスクの不足は、今も続いています。どうして改善しないのか、不思議です。マスクを使い回すなんて、感染リスクを考えたら絶対にやるべきではありませんが、仕方がありません」
医療現場にサージカルマスクを優先的に供給するため、国民に布マスクを使わせる、という大義名分は一体どこにいったのだろうか。
高い機能を持つマスクを正しく使えば、新型コロナから命を守ることも可能だが、国が配る布マスクには、もともとそのような機能はない。
はっきりしたのは、布マスクに多額の税金が注ぎ込まれるのは、国民の命を守るためではない、ということだ。
政策決定のプロセスが不透明で、国民や医療現場の要望に耳を貸そうとしない。このアベノマスクには、政府の新型コロナ対策そのものが、投影されているように思えてならない。
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