外国人母・発達障害・性的少数「26歳」の壮絶半生

いわれもない「差別」をひたすら受けてきた

ADHDと診断されたのは18歳のとき。それ以降、新しく知り合う人にはあらかじめ「ポンコツだけどいい?」と冗談めかして言うようにしている。また、起床から洗顔、着替え、持ち物確認などを分刻みの音声で指示してくれる携帯アプリを使うことで、遅刻を減らすようにしている。ショウタさんなりの自己防衛策である。

発達障害にはできることと、できないことの差が大きい「凹凸」があるとされるが、一方でショウタさんは多くの「凸」に恵まれているようにもみえた。

授業で習ったリコーダーや吹奏楽部で担当したチューバの演奏は周囲の大人が驚くほどのレベルだった。取材中、店内にはクラシックワルツが流れていたのだが、それらはショウタさんの頭の中で「音符で再現される」という。

機械いじりが得意で、ネット経由でゲームのコントローラーや携帯の液晶画面のひび割れの修理を請け負うと、1台5000~6000円の収入になる。また、英語とタガログ語は接客ができるくらいのレベル。ほかにも「一度通った道は忘れない」「車が好きで、ADHDには珍しく運転が得意」など。

経済的には余裕のない母子家庭で育ったので、すべて独学である。「興味のあることだと集中するんです」と言う。

教師からの体罰や差別「フィリピンだからなー」

タガログ語ができるのは、ショウタさんがフィリピン人の母親を持つダブルだからでもある。また、ショウタさんはゲイ、恋愛対象は男性である。二重、三重のマイノリティゆえに幼いころからたくさんの差別を受けてきた。

学童保育では、施設側の不注意で母親の迎えの前にショウタさんが帰ってしまったことがあり、息子の姿が見えないことに驚いた母親と職員が口論になった。その数日後、職員たちが「ショウタ君のお母さんはフィリピン人だから、日本語通じないからいいよ」と小声で話しているのが聞こえたという。それ以降「みんなで遊ぶときに先生から『ショウタ君が入るとバランス悪くなるから違う遊びしてな』と言われたり、当たりが強くなった」。

中学校での昼食時、ほかの生徒はみな弁当箱を持ってきていたのに、ショウタさんだけがランチジャーに入ったカレーと白米だったことがあった。するとそれを見た教師から「ちゃんとした弁当を持ってこい」と注意された。この教師は続けて「フィリピンだからなー」とも言ったという。

教師らとの関係がうまくいかず、休みがちになったある日、生活指導の教師に体罰を受けた。「相撲でよく見る『のど輪』をされました。口答えとかはしてない。泣きながら謝ってもやめてくれなくて。息ができなくなって……。今も40代くらいの男の人の前に出ると(恐怖で)ヒッとなります」。以後、本格的な不登校になった。

その後、母親と校長と三者面談をすることに。その席で、校長はなぜか母親の手を取り、手のひらと手の甲を見ると「日本に来てから働いていない手をしているね」と言ったという。このとき、母親は生活保護を受けていた。「帰り道で母親がすごく怒っていました。僕にはなぜ怒っているのかわからなかった。でも、僕には妹が2人いるんです。小さな子どもを抱えながら働くのは難しかったと思うんですよね。今は母親の気持ちがわかります」。

母親は怠け者などではない。妹たちの手が離れてからは、飲食店の仕込みやホテルのベッドメイク、水産加工場などあらゆる仕事をして自分たちを育ててくれたという。

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