やっている仕事を好きになれ コロムビアミュージックエンタテインメント取締役名誉相談役・廣瀬禎彦氏④

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ひろせ・さだひこ 1943年生まれ。69年日本IBM入社。広報・宣伝部長等歴任。96年アスキー専務、98年セガ副社長。99年アットネットホームを設立し社長に。2004年コロムビアミュージックエンタテインメントCEO就任、09年5月退任し、取締役名誉相談役に。

仕事には、「やりたいこと」ばかりでなく、「やらなくてはいけないこと」がたくさんあります。大切なのは「やっている仕事を好きになる」という意識だと思います。私はそうやってきました。

嫌だなと思いながら仕事をしてもよい成果は生まれません。どうしても嫌なら仕事を変えるしかありません。しかし、耐えられないほどでなければ、その仕事を好きになったほうがいい。目の前の仕事を楽しむようにするのです。これは気持ちの持ち方ひとつでできることです。

私はプログラマーとしてIBMに入社しましたが、適性がなく、他人の段取りを整えるような仕事をやるようになりました。やらされていると思うと、めげてしまうような仕事です。ところが、段取りがうまくいき、開発効率が上がると、開発者が喜ぶ。その姿は自分の喜びでもあった。そして次はもっと喜ばせてやろうと思い、仕事が楽しくなりました。

いつまでも訓練し続ける

他人からの評価は関係ありません。他人の評価はたくさんある中の一面にすぎませんから。自分がいかに満足感を得るかが大事なのです。

そうしないと何のために仕事をしているかわからなくなる。貧しい時代には、給料が入り、おいしいものを食べられればうれしかったが、最近はそれだけではうれしくない。

今は自分で自分の評価基準を持ち、価値を見つける時代です。自分が満足できることは何なのか、自分自身で考え、明らかにする。自分の満足ですから他人に頼っても仕方がない。誰かが満足させてくれることなんてありえません。

そして自分の満足度を高めるために、自分で努力する。自己啓発も必要でしょう。特に音楽や出版といったコンテンツ産業では、そこで働く人間が、価値を生み出す設備です。陳腐化したら人間といえども廃棄されてしまいます。そうならないよう、自分を磨かなければいけません。

経営者は、そうした中堅・若手がリフレッシュできるような態勢を整えることが役割です。学生のようにホームワークを課すことも必要でしょう。特に中堅クラスになり、ある程度仕事を覚えると、家に帰ってから勉強しなくなるものですから。

音楽業界で言えば、たとえば制作ソフト「スクラッチライブ」を習得しなさいと課す。多くのアーティストが使うそのソフトを理解しなければ彼らと一緒になって売れるものを作ることはできません。時代遅れにならないよう、そして自分自身の満足度を高められるよう、いつまでも訓練し続けることが大切なのです。

週刊東洋経済編集部
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