状況に応じて求められるリーダー像は違う

コロムビアミュージックエンタテインメント取締役名誉相談役・廣瀬禎彦氏③

ひろせ・さだひこ 1943年生まれ。69年日本IBM入社。広報・宣伝部長等歴任。96年アスキー専務、98年セガ副社長。99年アットネットホームを設立し社長に。2004年コロムビアミュージックエンタテインメントCEO就任、09年5月退任し、取締役名誉相談役に。

リーダーがやるべきことは方向を設定することです。しかし、これが普遍的かというと必ずしもそうではない。状況に応じて求められるリーダー像は違うのです。

 「経営者はビジョンを語れ」と言われることが多い。ところが赤字が出ていて、あと1年しかもたないというときにビジョンを語っていても仕方ない。「こういうときこそビジョンを」という社員もいますが、そんなものではない。赤字のときは緊急手当てをするしかないのです。

そのときのリーダーに必要なのは優先順位を明確にすること。たくさんの仕事の中から、今やるべきはこれとこれで、その優先順位はこうだ、と決めるのがリーダーです。それも細部まで詰めないといけない。

状況に応じて求められるリーダー像は違う

音楽業界でいえば、CDの作品ごとにコストと売り上げを見る。採算がとれていればパス。とれていなければ採算性の順に並べ、悪いほうから消していく。これが私のスキルです。ものすごく単純化する。ほとんどの人がこうはできない。憐憫の情が移ったり、これまでの経緯を思い、これは残したほうがいいと考えたりする。しかし、そういうことは経営が安定してからやればいい。

物事はできるだけシンプルにする。1個1個分解して、悪いところを外していく。そうしたら今度は、残ったよい部分を組み合わせて、新しいものを作ればよいのです。

細部を詰めることの大切さは、CSKの創業者、大川功さんから学んだ点が多かった。私がCSK傘下のセガ副社長だったとき、「望遠鏡ばかり持って歩いていてはダメだぞ。ちゃんと顕微鏡も持って歩け」ということをよく言われました。足元をしっかり見ながら遠くも見ろ、と。

実際、大川さんは、100万円の案件でも10億円の案件でも、同じように真剣に議論していました。あるゲーム機のコストで100万円余計にかかるので承認してほしいということがあった。それを大川さんは、どうしてだとしつこく聞いた。ただしていくと、最初から考えておくべき点を抜かしていたことがわかった。大川さんは、そういうことがすぐにピンとくる人だった。やるべきことをやっていないことに対しては、非常に敏感でした。

これはとても大事なことです。額が小さいからといって見逃すと、その後も似たようなことが繰り返されて、大きな額になってしまうかもしれません。見つけたときに指摘し、その後の芽を摘まないと。細かなディテールを一つひとつしっかり見る、これが経営者の要諦なのです。ーダーがやるべきことは方向を設定することです。しかし、これが普遍的かというと必ずしもそうではない。状況に応じて求められるリーダー像は違うのです。

ライフの人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • インフレが日本を救う
  • 仲人はミタ-婚活現場からのリアルボイス-
  • ぐんぐん伸びる子は何が違うのか?
  • 就職四季報プラスワン
トレンドライブラリーAD
人気の動画
「睡眠不足を甘く見る人」が払う体への代償
「睡眠不足を甘く見る人」が払う体への代償
保険営業 ノルマ未達なら「雇用契約打ち切り」の無惨
保険営業 ノルマ未達なら「雇用契約打ち切り」の無惨
ラーメン店の倒産ラッシュが必然でしかない事情
ラーメン店の倒産ラッシュが必然でしかない事情
攻撃的な人の態度を軟化させる絶妙なワザ
攻撃的な人の態度を軟化させる絶妙なワザ
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
人材戦略から儲けのからくり<br>まで コンサル全解明

人材の争奪戦が過熱し、年収水準もうなぎ登りに。デジタル化を背景にコンサルティング業界は空前の活況を呈しています。本特集ではコンサル業界の動向やビジネスモデルを徹底解説。コンサル会社を賢く選び、上手に活用していくノウハウを紹介します。

東洋経済education×ICT