リーダーがやるべきことは方向を設定することです。しかし、これが普遍的かというと必ずしもそうではない。状況に応じて求められるリーダー像は違うのです。
「経営者はビジョンを語れ」と言われることが多い。ところが赤字が出ていて、あと1年しかもたないというときにビジョンを語っていても仕方ない。「こういうときこそビジョンを」という社員もいますが、そんなものではない。赤字のときは緊急手当てをするしかないのです。
そのときのリーダーに必要なのは優先順位を明確にすること。たくさんの仕事の中から、今やるべきはこれとこれで、その優先順位はこうだ、と決めるのがリーダーです。それも細部まで詰めないといけない。
状況に応じて求められるリーダー像は違う
音楽業界でいえば、CDの作品ごとにコストと売り上げを見る。採算がとれていればパス。とれていなければ採算性の順に並べ、悪いほうから消していく。これが私のスキルです。ものすごく単純化する。ほとんどの人がこうはできない。憐憫の情が移ったり、これまでの経緯を思い、これは残したほうがいいと考えたりする。しかし、そういうことは経営が安定してからやればいい。
物事はできるだけシンプルにする。1個1個分解して、悪いところを外していく。そうしたら今度は、残ったよい部分を組み合わせて、新しいものを作ればよいのです。
細部を詰めることの大切さは、CSKの創業者、大川功さんから学んだ点が多かった。私がCSK傘下のセガ副社長だったとき、「望遠鏡ばかり持って歩いていてはダメだぞ。ちゃんと顕微鏡も持って歩け」ということをよく言われました。足元をしっかり見ながら遠くも見ろ、と。
実際、大川さんは、100万円の案件でも10億円の案件でも、同じように真剣に議論していました。あるゲーム機のコストで100万円余計にかかるので承認してほしいということがあった。それを大川さんは、どうしてだとしつこく聞いた。ただしていくと、最初から考えておくべき点を抜かしていたことがわかった。大川さんは、そういうことがすぐにピンとくる人だった。やるべきことをやっていないことに対しては、非常に敏感でした。
これはとても大事なことです。額が小さいからといって見逃すと、その後も似たようなことが繰り返されて、大きな額になってしまうかもしれません。見つけたときに指摘し、その後の芽を摘まないと。細かなディテールを一つひとつしっかり見る、これが経営者の要諦なのです。ーダーがやるべきことは方向を設定することです。しかし、これが普遍的かというと必ずしもそうではない。状況に応じて求められるリーダー像は違うのです。
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