私は出来の悪い社員でした。大学を卒業して最初に入社したのは日本IBM。プログラマーとして入ったのですが、適性がなかった。一つのソフトを作るのに、私は何日もかかりましたが、隣にいた先輩は1時間ほどで作ってしまう。そういう人がたくさんいて、そのうちに先輩や同僚の間で、廣瀬にはプログラムを書かせないほうがいいという評価が定着してしまいました。
ところがソフト開発には面白い仕事がありました。職人気質のプログラマーが何人もかかって作り上げるのがソフトウエア。お互いにコミュニケーションをとり、スケジュールなどを調整することが必要でした。それを彼らは嫌がった。そこで、当時誰もやっていなかったそうした段取りを整える仕事をやり始めた。それが彼らに喜ばれた。結果としてソフト開発の能率が上がりました。
外部とのコラボレーション(連携)が重要
こういう仕事はソフト開発だけでなく、さまざまなプロジェクトで重要です。広告戦略を練るとか、販売展開を考えるとか、たくさんの人がかかわる案件を進めるときには、環境を整備する人が必要なのです。最近、ファシリテーター(促進者)が大切だ、と言われますが、私は40年前に気づき、実践していました。
日本IBMに25年、大型システムのプロジェクトマネジャーや宣伝、営業の責任者を任されました。最後はパソコン事業を統括するコンシューマ事業部長を務めました。そして出版社・アスキーの専務へ転じ、ゲーム機・セガの副社長へ、さらにブロードバンドネットワークのアットネットホームを社長として立ち上げました。現在はコロムビアミュージックエンタテインメントのCEOを5月に退任し、名誉相談役です。
すべて異なる業界ですが、いずれもピラミッド型ではない組織を持ち外部とのコラボレーション(連携)が重要。こういう業界では経営者がファシリテーターとしての役割をいかに果たせるかがカギを握ります。
最近は多くの企業の管理職の方も、社外のみならず社内の連携の重要性を感じていると思います。自分の部署だけでなく全体を見渡し、自分がつながっているところを見なくてはいけない。ポイントは、要素ごとに見るということです。自分の部署に入ってくるものは何か、自分たちが出さなくてはいけないものは何か。一緒に作らないとできないものは何か。要素ごとに考え、需要の変化に応じて、新たにつながるべき要素も見つけ出す。こうした調整や段取りのできる能力が、今後ますます大事になってくると思います。
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