日本メーカーに課されている挑戦 桃山学院大学客員教授・門脇轟二氏④

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かどわき・こうじ 1942年生まれ。65年大阪外国語大学中国語学科卒業、本田技研工業入社。欧米など海外畑を歩み、98年に広州汽車と合弁設立した広州本田汽車有限公司の総経理就任。2000年には外国人として初の広東省労働模範に選ばれる。07年より桃山学院大学客員教授。

中国の自動車市場は5年前、500万台でしたが、今年は1200万台に達する見通しで、世界ナンバーワンになる。こんなスピードで伸びた国はありません。急速な経済成長に伴う先行き懸念が指摘されますが、私の実感としては、中国の一般の人たちはそれほど不安に思っておらず、政府をある程度信任している。なぜなら都市部と地方で差があっても、生活水準は間違いなく向上しているからです。

 経済性の高い大衆車は中国だけでなく世界でまだまだ伸びるでしょう。ただ、これまで日本の大手自動車メーカーが多くのおカネをつぎ込んだのは大型車が中心のアメリカで、反動減のショックも大きかった。ホンダにも、ややそのきらいがありましたが、幸か不幸か他社ほど大きな設備投資を行う力がなかったので、影響が比較的少なく済んだ。

日本に課されている、安全で安い車を作るという挑戦

お客様が求めているものであればチャレンジすべきで、目をつぶっちゃいけないというのが私の基本的な考え方です。というのも2輪で苦い経験があります。かつて中国でコピー車のような非常に安い国産バイクが出回り始めたとき、「あんなもの」と一度は無視しました。ところが、今や農村の重要な足になった。その後、「これは」と大反省し、上海に研究所を立ち上げました。

今後、4輪の世界でもこれに似たようなことが、アジア市場で間違いなく起こるはずです。日本市場が500万台を切ろうとする中、その日本の英知だけで世界を見ていくのは難しい。メーカー自身がコスモポリタンになっていかなければ、本当の意味で発展がないと思います。

すでにインドでは現地メーカーのタタ自動車が30万円台の車を出しており、あの安さには勉強すべき点もあります。しかし、自動車先進国に通用する品質レベルなのかというと全然違う。日本のメーカーに課されているのは、先進国の安全基準や排ガス基準に通用するレベルで、さらに安い車を作るという挑戦です。厳しい燃費規制などをいち早くクリアしてきたホンダは当然やるべきだし、ほかのメーカー以上にそれが求められていると思っています。

そうした意味では、今年から社長になった伊東孝紳(本田技術研究所社長も兼務)に期待しているんですよ。ちょっと何をやるかわからないところもありますからね(笑)。変にまじめな紳士より、少し“がらっぱち(粗野)”なおっさんのほうがいい。「危なっかしさ」みたいなものが、ホンダらしくていいんじゃないでしょうか。

週刊東洋経済編集部
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